2002 Fiscal Year Annual Research Report
環境中および生体内で生成するハロゲン置換体の解毒体謝と乳癌発生への影響
Project/Area Number |
14580570
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
下位 香代子 静岡県立大学, 環境科学研究所, 助教授 (10162728)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
若林 敬二 国立がんセンター研究所, がん予防研究部, 部長 (60158582)
竹村 ひとみ 静岡県立大学, 看護学部, 助手 (60295558)
寺尾 良保 静岡県立大学, 環境科学研究所, 教授 (60046282)
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Keywords | 乳癌 / ハロゲン置換体 / エストロゲン / ビスフェノールA / 解毒代謝 / 抱合化酵素 / 炎症 / 子宮重量 |
Research Abstract |
環境中に存在する有害性化学物質は、光化学反応、ラジカル反応、塩素化反応などによりさらに毒性の強い難分解性、体内蓄積性のある物質に変化する可能性がある。一方、生体内では、感染や種々の疾患に伴う組織の慢性炎症が起こると、局所的に炎症性細胞によりラジカル反応やハロゲン化反応が惹起される。研究分担者の寺尾らは、工場排水中からビスフェノールA(BPA)の塩素置換体を検出・同定している。そこで、本研究では、BPAをモデル化合物として、その塩素置換体が炎症時などに生体内で生成する可能性、それらの解毒代謝およびエストラジオール(E2)代謝への影響を明らかにすることを目的とした。 本年度は、まず、好中球により放出されるmyeloperoxidase(MPO)によるBPAのハロゲン化反応について検討した。その結果、NaCl、MPO、過酸化水素共存下で3-ClBPA、3-BrBPAが生成し、Br体の方が生成しやすいことがわかった。(本研究結果については、フォーラム:衛生薬学・環境トキシコロジー、10月、広島にて発表した。)現在、生体内での生成については検討中である。一方、ヒト乳癌細胞(MCF-7)をBPAおよびそのハロゲン置換体とE2を添加した培養液中で培養し、細胞外液および細胞内のE2遊離体および抱合体量を測定することにより、E2の細胞内代謝に与える影響を検討したが、影響は観察されなかった。しかし、卵巣を摘出したラットの子宮重量への影響について検討したところ、薬理学的に十分でない、すなわち増殖作用を示さない量のE2とそれ自身では増殖作用を示さない量のBPAを同時に投与すると、増殖作用を亢進する傾向が観察された。従って、本結果は、BPAが子宮組織においてE2の代謝に影響を与えている可能性を示唆しており、今後量的な効果と代謝酵素への影響を詳細に検討することにした。
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