2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14580603
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
五箇 公一 独立行政法人国立環境研究所, 化学物質環境リスク研究センター, 室長 (90300847)
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Keywords | セイヨウオオマルハナバチ / オオマルハナバチ / クロマルハナバチ / 寄生生物 / ミトコンドリアDNA / 系統樹 / 遺伝的分化 / 侵入生物 |
Research Abstract |
本年度は、在来マルハナバチにおける寄生性ダニ・マルハナバチポリプダニの感染実態の調査を行った。日本全国より採集した日本産マルハナバチ17種の地域個体群について、解剖を行い、ダニの感染状況を調べた。その結果、オオマルハナバチ亜属に属するオオマルハナバチ、エゾオオマルハナバチ、ノサップマルハナバチ、クロマルハナバチ、および、ナガマルハナバチ亜属のナガマルハナバチの6種に感染が認められたが、その他の種からはダニは検出されなかった。これらマルハナバチの種間および地域個体群間の系統関係とダニの感染率との関係を明らかにするために、宿主であるマルハナバチのミトコンドリアDNAチトクロムオキシダーゼ遺伝子領域および核DNAロドプシン遺伝子領域の塩基配列変異を調べ、系統樹を構築した。その結果、いずれの遺伝子座領域の塩基配列に基づく系統樹においてもオオマルハナバチ亜属に属する種群は一つのクレードを形成し、またそのクレード内には、外来種セイヨウオオマルハナバチも含まれた。このことはセイヨウオオマルハナバチを含むオオマルハナバチ亜属のマルハナバチ類は大陸で分化を果たし、急速にその分布を拡大した種群であると推察された。一方、ナガマルハナバチはオオマルハナバチ亜属とは異なるクレードに属した。これらのマルハナバチ類から検出されたダニの遺伝的分化の程度を明らかにするために、ダニのミトコンドリアDNAチトクロムオキシダーゼ遺伝子領域についても塩基配列変異を調べ、系統樹を構築した結果、ダニの遺伝的分化はほとんど進んでおらず、宿主ごとに分離されたダニ間の遺伝的距離は極めて短いものであった。このことはダニの感染および蔓延の歴史が極めて浅く、マルハナバチの種分化の後に感染したダニが寄主拡大を果たしたものと推察された。ダニの感染が一部の種に限られているメカニズムについては、不明であるが、今後マルハナバチの外来種および在来種の商品化が進む過程で、寄生性ダニが他の種類にも水平感染する恐れがあると考えられた。
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Research Products
(1 results)