2002 Fiscal Year Annual Research Report
再生修復または臓器線維化を誘導するビトロネクチン分子の糖鎖調節機構
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14580622
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
小川 温子 お茶の水女子大学, 大学院・人間文化研究科, 助教授 (90143700)
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Keywords | ビトロネクチン / 細胞外マトリックス / 肝疾患 / 組織再生修復 / 糖鎖調節 / 肝線維化 / 肝硬変モデルラット / 四塩化炭素投与 |
Research Abstract |
糖鎖による組織修復の制御機構を解明する基礎として,傷害部位での組織溶解を制御し、かつ細胞の接着や移動を仲介して組織修復の調節にも関わる糖タンパク質、ビトロネクチン(VN)の肝線維化進展における変化に着目して、以下の事項を明らかにした。 (l)健常者ならびに慢性肝疾患患者(慢性肝炎、肝硬変、肝細胞ガン)においては、肝疾患に伴う血中タンパク質濃度の低下と併行して、肝硬変患者血中のVN濃度は、健常者の約70%に低下していた。一方、VN精製量は、肝炎から硬変、癌化と疾患の進行にともない著しく低下し、健常者に比較してそれぞれ1/2、1/3、1/4となった。ヘパリンクロマトグラフィーによる精製量が激減したことから、疾患に伴うVNのヘパリン結合性の変化が考えられた。糖鎖について、肝硬変患者でシアル酸とフコース含量ならびに分岐度の増加が示された。 (2)血漿中VNについてI型コラーゲン結合活性は、健常者に比べて肝硬変患者では、2.5倍に増強していた。ところが精製VNにおいては、肝硬変患者VNのコラーゲン結合活性は健常者と同じか少し低下していたので、健常者ではほとんど不活性で血漿中に存在するVNが、患者では高い割合いで活性化されていることが示唆された。 (3)慢性肝障害モデルとして、四塩化炭素を6週継続投与することにより作成した肝硬変モデルラットの合成するVNについて調べたところ、四塩化炭素投与ラットでは非投与ラットに比べて血中VN濃度および精製量が増加していた。一方、血中の活性型VNの割合は低下し、精製VNのコラーゲン結合活性は増強の傾向が示され、ヒト肝硬変患者とは相反する変化を示した。肝硬変モデルラットVNでもシアル酸含量は増加していたが、レクチン反応性からその他にも糖鎖構造の大きな変化が示唆された。 以上より、慢性の肝疾患やがん化にともなって再生時とは質的に異なる糖鎖変異VNが合成されることが示された。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] Ueda, H., Matumoto, H., Takahashi, N., Ogawa, H.: "Psathyrella velutina mushroon lectin (PVL) exhibits high affinity toward sialoglycoproteins possessing terminal N-acetylneuraminic acid α2,3-linked to penultimate galactose residues of trisialyl N-glycans : comparison with other sialic asid-specific lectins"J.Biol.Chem.. 277. 24916-24925 (2002)
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[Publications] Matsushita, H., Takenaka, M., Ogawa, H.: "Porcine pancreatic α-amylase shows binding activity toward N-linked oligosaccharides of glycoproteins"J.Biol.Chem.. 277. 4680-4686 (2002)
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[Publications] 小川温子: "花粉症アレルギーと糖鎖抗原"J.Appl.Glycosci.. 50. (2003)
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[Publications] 小川温子, 岩城はるひ: "池田康夫・丸山征郎編「血小板生物学」第1章E粘着性蛋白:構造と機能 フィブロネクチン、ビトロネクチン"(株)メディカルレビュー社. 250 (2002)
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[Publications] 小川温子: "日本化学会編 先端化学シリーズIII「21世紀の化学の潮流をさぐる」第3巻 糖鎖工学 糖鎖を操作して組織の再生・修復能力を向上させる"丸善(株)(近刊). (2003)
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[Publications] 小川温子: "背山洋石他編 スタンダード栄養・植物シリーズ3「人体の構造と機能I 生化学」第7章"東京化学同人.
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[Publications] H.Ogawa, H.Ueda, A.Natsume, R.Suzuki: "Methods in Enzymology, a volume of Recognition of "Recognition of carbohydrates in biological systemes""Academic Press, San Diego(近刊)(分担執筆). (2003)
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[Publications] H.Ueda, H.Ogawa: "Methods in Enzymology, a volume of Recognition of carbohydrates in biological systemes"Academic Press, San Diego(近刊)(分担執筆). (2003)