Research Abstract |
1.グリセロールデヒドラターゼの結晶構造解析。 組換え体グリセロールデヒドラターゼを精製し,その酵素化学的性質を明らかにするとともに,酵素を結晶化してそのX線構造解析を行った。1,2-プロパンジオールの2つのエナンチオマーに対する反応速度はR体がS体の2.5倍速かったのに対して,Km値から予測される親和性はS体の方が約1.5倍強かった。一方,酵素-シアノコバラミン-1,2-プロパンジオール複合体のX線結晶構造解析からは,酵素がαβγヘテロトリマーの2量体構造をとり,αとβサブユニットの界面に補酵素が"base-on"構造で結合し,活性中心がαサブユニットの(α/β)_8バレル構造の中に存在し,そこで基質とK^+が複合体を形成しているなど,ジオールデヒドラターゼの立体構造との高い相同性が見いだされた。酵素に結合していたプロパンジオールはラセミ体を用いで結晶化したにも関わらず,R体であり,S体が結合していたジオールデヒドラターゼとは異なっていた。両酵素のグリセロール脱水触媒中の不活性化のされ易さの差異がこの基質の立体選択性により説明可能であることも指摘した。 2.ジオールデヒドラターゼの活性中心にある残基への変異の導入と変異型酵素の機能解析。 本酵素の活性中心でK^+または基質と直接相互作用している7つの残基,Gln141,His143,Glu170,Glu221,Gln296,Asp335,Ser362のそれぞれをAla残基に置換した変異酵素Qα141A, Hα143A, Eα170A, Eα221A, Qα296A, Dα335A, Sα362Aを作成した。これらの変異酵素のうち,Eα221AとDα335Aは(αβγ)、の四次構造を形成できず,酵素活性を示さなかった。同様に酵素活性をほとんど示さなかった,Hα143AとEα170Aは(αβγ)2を形成でき,酵素反応の中間体である基質ラジカルとB_<12r>が確認できたことから酵素の触媒機能に重要な機能を担っていると考えられる。残りのQα141A, Qα296A, Sα362Aは酵素活性の低下が限られており,触媒に直接関与する可能性は低い。
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