2002 Fiscal Year Annual Research Report
アストロサイト特異的アデノウイルス発現ベクターによる脳腫瘍遺伝子治療の基礎的研究
Project/Area Number |
14580732
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
前田 光代 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 講師 (40122080)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
濤川 一彦 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 助手 (50312468)
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Keywords | アストロサイト / 脳腫瘍 / 遺伝子治療 / Cre / LoxP / アデノウイルス |
Research Abstract |
現在臨床段階で最も多く検討されている脳腫瘍の遺伝子治療はHSV-tk geneを自殺遺伝子として脳腫瘍細胞に導入し、ganciclovir (GCV)を投与して抗腫瘍効果を導くものであるが、腫瘍細胞のみならず、腫瘍細胞周囲の健常な脳組織まで死滅し、薬物効果による非選択的な障害はさけられなかった。そのためにはウイルス増殖過程では目的遺伝子の発現が抑えられ、標的細胞に感染させた時に初めて、発現する厳密な発現制御系を用いることが必要である。これらの問題解決のためにアストロサイト特異的プロモーターを使用し、近年新たに開発されたCreリコンビナーゼとその認識配列であるloxPを用いた発現制御系を使用し脳腫瘍の遺伝子治療効果について検討することを目的とし、ラットC6グリオーマモデルを用い本実験を行った。このシステムではCAGプロモーターと、目的遺伝子HSV-tk間のスタッファー領域は、polyAシグナルのためsilent formとして、目的遺伝子は発現せず、GFAPプロモーターを有するCreリコンビナーゼをコードしている制御ウイルスを共感染させることにより、loxP配列が切り出され、目的遺伝子であるHSV-tkの発現が生じ、アストロサイト由来の悪性グリオーマに特異的に抗腫瘍効果を期待することができる(LGL群)。さらに、悪性グリオーマに対しては抗腫瘍効果を、周囲の神経組織に対しては保護効果を期待する目的で、loxP間に神経細胞保護効果のあるBDNFを挿入したスタッファー配列を有するsilent formを作製し実験に供した(LBL群)。結果、アデノウイルスベクター治療群では治療開始後40日で、腫瘍細胞の完全な消失嚢胞化を認め、この新しく開発されたシステムの有効性が確認された。また、生存率曲線のグラフの解析からは、LBL群の方がLGL群に比較して生存効果が大であることが確認された。
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