2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14580776
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
岸 清 東邦大学, 医学部, 教授 (00014118)
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Keywords | ニオイ分子 / 反応特性 / 量子化学 / 電子供与性フロシティア電子密度 / ニオイ強度 / ニオイの性質 / 統計学的解析 / CAChe Work System |
Research Abstract |
ニオイ分子のニオイ識別信号を解明するために、ニオイ分子の量子化学的反応特性と調香師によるニオイ強度判定との相関関係を統計的に解析した。まずラズベリー香気8分子と無香気19分子を含むラズベリーケトン関連27分子(Winter,1961)の電子供与性フロンティア電子密度(EFD)をCAChe Work System(Oxford)を用いて計算した結果、最も高いEFD値はベンゼン核の特定の2つの炭素原子(両者の結合距離は1.403±0.020Å)に認められ、この2炭素原子のEFD値をfbとfcと名付けた。fbとfcの値は、全てのラズベリー香気分子と全無香気分子を誤判別確率0.00%で判別し、かつラズベリー香気が強い、弱い、ないという判定と重回帰係数0.9888(p<0.01)で線形相関することが分かった。さらに、ラズベリーケトンのベンゼン核の2炭素間の結合距離は、我々が先に報告したムスク関連の203分子の2炭素原子の結合距離と有意に等しかった(p<0.01)。そこで、ラズベリーケトン27分子とムスク関連203分子を用いて、全ての分子に共通するfbとfcの値が、ラズベリー香気分子、ラズベリーとムスク無香気分子、ムスク香気分子の3群を識別するかを正準判別分析法で解析した。fbとfcは、全てのラズベリー香気分子、無香気83分子中79分子、ムスク香気139分子中122分子を識別することが判明した。この結果をAmerican J Food & Agriculture Chemistryに投稿したが、解析したWinterのデータ(1961)が古いという理由で掲載を断られた。現在、量子化学関係誌に投稿準備中である。また、異種構造で同一のニオイをもつカカオ香気13分子、イソプロテニル基とフェニル基の香気類似性に関する20分子、スズラン香気関連12分子、ジャズミン香気関連14分子などの解析を終了し、統計的に十分に有用であると考えられる結果を得ている。しかし、我々の量子化学的解析法は、生物学の分野で応用されてこなかった方法であるために、掲載を許可する雑誌がごく少数であることに難渋している。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 石川陽一, 岸 清: "ニオイ分子の量子化学的解析"細胞. 35・5. 201-205 (2003)
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[Publications] Chen S, Murakami K, Oda S, Kishi K.: "Quantitative analysis of axon collaterals of single cells in layer III of the piriform cortex of the guinea pig"J.Comparative Neurology. 465. 455-465 (2003)
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[Publications] Yovng J, Quteiish AU, Murakami K, Ishikawa Y, Takayanagi M, Kakuta S, Kishi K.: "Quantitative analysis of axon collaterals of single neurons in layer IIa of the piriform cortex of the guinea pig"J.Comparative Neurology. 473. 30-42 (2004)