2002 Fiscal Year Annual Research Report
下行性抑性系の加齢に伴う変化が脊髄痛覚伝導路の可塑性に及ぼす影響
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14580795
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
神田 健郎 (財)東京都高齢者研究・福祉振興財団, 東京都老人総合研究所・運動・自律機能相関研究グループ, 参事研究員 (50009635)
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Keywords | 痛覚 / 老化 / 可塑性 / 下行性抑制系 |
Research Abstract |
高齢者の急性痛については、精神物理学的方法を用いた多くの研究があり、痛覚に対する感受性は、高齢者でやや低下、または変化しないとする報告が多い。最近になり、少数ながら動物実験による研究もなされるようになった。しかし、行動(侵害刺激に対する逃避行動)観察を主体としたもの、または、神経伝達物質やその受容体についての免疫組織学的手法による研究に限られている上に、結果は必ずしも一致していない。 我々はこれまでの研究で、高齢ラットでは脊髄後角侵害受容ニューロンの活動がかえって亢進していること、反復刺激による時間的促進(wind-up現象)が起こり易いことを見いだした。そして、この原因に高齢ラットでは下行性疼痛抑制系の機能不全が起こっている可能性を考えた。本研究でこの仮説の妥当性を検証し、高齢者の慢性痛への対処方法を検討することを目標とした。 本年度は、wind-up現象への関与が指摘されている伝達物質およびその受容体亜型について、従来のwind-up評価値と我々が新たに指標として定めた減衰時定数とから検討した。 末梢神経の反復刺激により誘発される屈曲反射は次第に減少し、これには下行性の抑制系の働きが関与している。この減衰は、GABAの拮抗薬であるbicucullineにより減弱したが、wind-up減衰時定数には大きな影響を示さなかった。セロトニンの選択的取り込み阻害薬であるFluvoxamineの投与は、高齢ラットでのwind-up減衰時定数を低下させる傾向を示したが、その程度は有意の効果とは判定できなかった。また、セロトニンの前駆体である5-HTPの投与では高齢ラットへの時定数低下効果は認められなかった。以上、高齢ラットでのセロトニン作動性神経系の機能低下が示唆されるものの、明らかな変化は認められなかった。
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