2002 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本における欧米少年保護思想の受容の様相--世界的な潮流のなかでの家庭学校--
Project/Area Number |
14591002
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
二井 仁美 大阪教育大学, 教育学部, 助教授 (50221974)
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Keywords | 感化教育 / 感化院 / 留岡幸助 / 家庭学校 / 近代 / 少年保護 / 史料 / 欧米思想の受容 |
Research Abstract |
近代における少年保護を巡る世界的な潮流の中で日本の感化教育がいかなる位置を占めるのかを考察するための前提的作業として、本年度は、留岡幸助(1864-1934)と彼が設立した家庭学校が収集した欧米の少年保護関係文献の様相を史料論的に検討することを試みた。今年度の調査により、同資料室所蔵の未整理資料約18,000件(2003年1月確認分)中、5,678件(単行本2,192点、逐次刊行物約70タイトル、3,486点)の洋書を確認した。蔵書印やサイン、書込等、留岡幸助の蔵書であったことを示す情報が付された文献は、単行本182件、逐次刊行物61点であった。とくに書込情報は一定の書物に集中しており、留岡による欧米感化教育思想受容の様相を知る手がかりとなった。書物には献辞も多く寄贈者名にある「Miss Borden」なる人物が留岡の欧米文献取得に貢献していることも明らかとなった。また、留岡幸助が渡米前から注目していたマサチューセッツ州コンコードリフォーメトリーで刊行している"Our Paper"は、1894年から1941年まで45年にわたって1296件が残されており、留岡と家庭学校関係者が長く"Our Paper"を講読したことも確認された。 他方で、東京家庭学校資料室が所蔵する洋書の逐次刊行物について、国内外の図書館における所蔵状況をNacsys-Webcatとアメリカ議会図書館(LC)の蔵書目録により検索した。その結果、LCには所蔵されているが日本の図書館では所蔵が確認できない文献や、国内図書館だけでなくLCにおいても所蔵されていない文献が東京家庭学校資料室に所蔵されており、同室が近代日本における欧米少年保護思想の受容を探る上で、きわめて貴重な資料群を保有する機関であるということが確認された。
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