2004 Fiscal Year Annual Research Report
ケアワーカーの養成過程におけるジェンダー課題:伝統的女性労働と「専門性」確保
Project/Area Number |
14594001
|
Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
笹谷 春美 北海道教育大学, 教育学部・札幌校, 教授 (00113564)
|
Keywords | ケアワーカー / 養成政策 / 専門性 / ジェンダー / カリキュラム / 雇用形態 / 介護保険制度 / 北欧 |
Research Abstract |
今年度は、最終年度にあたるため、過去2年間の調査で不十分であった領域の補足調査を行った。 1.(1)ケアワーカーの養成をしている専門学校、(2)ケアワーカーの派遣業者のリーダー層に「専門性とは何か」「現状の問題点」「将来のケアワーカーの養成のあり方について」の聞き取り調査を行った。 2.介護保険施行後の「専門性」をめぐる議論と「資質向上」を目指すための「めまぐるしい」制度的変更-教育内容および介護福祉士の資格試験の方法、教員資格の見直しなど-の追跡および分析を試みた。 明らかになった知見は以下の通りである。 1.専門学校に入学する学生の質・量の低下が見られる。 介護保険施行後、様々な情報を高校や生徒たちが入手可能となり、一時のような介護職に憧れて進学する若者が減少している。途中退学や入職後の離職率にそれが反映している。 2.一定のカリキュラムに基づく教育内容は普遍的でジェンダー中立であるが、各学校の学生の質の良さをアピールするための隠れたカリキュラムの中にジェンダーバイアスが存在する。 3.同時に学校の教育内容のレベルを左右するのは、「実習」への取り組みにあることも予想された。実習先でのトレーニング内容のみならず事前・事後指導により高齢者をトータルに観察・ケアをする力量に差が出てくることが分かった。 4.一方、ヘルパーの派遣業者からは、登録型やパートの主婦ヘルパーに対して、専門的力量と自らそれを高めようとする意欲の欠如に対する批判も聞かれた。まさに女性労働市場における伝統的隘路と悪循環がケアワーク市場でも根をはっていることが見えた。 5.また、民営化の下ではジョブ・トレーニングの機会が与えられることは少ないことも判明した。 6.ジェンダー差別的な市場の問題と「専門性」「質の向上」政策は介護保険制度の下では対立的構造として現われ、その調和と解決にはまだ多様な議論と試行が必要だと考える。
|
Research Products
(2 results)