2003 Fiscal Year Annual Research Report
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14594019
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Research Institution | Tokyo KaseiGakuin University |
Principal Investigator |
上村 協子 東京家政学院大学, 家政学部, 助教授 (00343525)
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Keywords | 家計資産・財産 / ジェンダー / 共同性・個別性 / 相続・贈与 / 女性農業者 / 農地 / 生活設計 / 親子・夫婦 |
Research Abstract |
【目的】 女性が個人として、生涯を通じ社会の中で持てる可能性の限界に挑戦する生活の主体であるために、また固定化され行き詰まった経済社会のシステムを柔軟に活性化するために、家計資産におけるジェンダー研究の必要性は高い。 「限りある生涯という時間」を財の共有・贈与という営みによって交差させ「連続し蓄積されていく人生の時間」を繋いでいく相続から、女性と財産研究の方法論の構築に向けて、資料と論点の整理を行った。 【報告書の構成】 第I部:東京女性財団調査(1998)から、個人名義資産は誰のものかという相続にみられる妻と夫の意識を、身分効果志向(妻であるから)と個人業績志向(貢献したから)から検討し、継承の論理と移転の論理の交錯が資産格差を生む過程を整理した。 第II部:経済政策研究所調査(1988-1991)を資料に、個人のライフコースにおける家族内資産移転(親子を軸とする世代間移転と夫婦を軸とする世代内移転)を規定する要因の変遷を地域性に考慮し検討した。 第III部:農村生活総合研究センター調査(2002)から、資産種類別の個人処分可能性意識(自己名義資産を処分できるか)を焦点化し分析した。農地・宅地・家屋という3種類の不動産所有で圧倒的な男女の資産所有格差が存在する。経営主世代男性には購入した農地も親から相続した農地でも処分可能という意識が見られるが、女性は処分不可意識が強い。農地処分可能性意識の断絶を指摘し、個人資産・家産をこえる共同選択的共有資産について考察した。 第IV部:相続時精算課税制度課税制度を例に、相続税・贈与税など社会制度の設計にジェンダー視点の欠如が生み出す問題を推察した。 第V部:世代間の価値観の伝達、大正生まれ女性の個人史インタビュー調査から家族と社会という枠組みや世代を超えた生活の理念と財の共有の可能性を探った。 相続にみる女性と財産には、家計資産を軸に個人の相互依存的関わりを形成し、世代を再生産する方法が示唆される。
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