2004 Fiscal Year Annual Research Report
新生殖技術における意思決定の文化・社会的要因分析-胎児診断の事例から
Project/Area Number |
14594023
|
Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
加藤 秀一 明治学院大学, 社会学部, 教授 (00247149)
|
Keywords | 妊娠 / 胎児診断 / 出生前検査 / 超音波検査 / 母体血清マーカー検査 / 羊水検査 / 質問紙調査 / 聞き取り調査 |
Research Abstract |
本年度は3年間の研究の最終年度にあたる。そのため、14年度に実施した「妊娠と出生前検査の経験に関するアンケート調査」の結果と、15年度に実施した「聞き取り調査の結果」を分析し、研究報告書を作成すると共に、論文等の発表を進めてきた。 まず、質問紙調査(東京都内にて配布、有効回答数は360通)。まず、ほとんどの妊娠経験者が超音波検査を受診しており、超音波検査受検を肯定的に受け止めていた。また、超音波検査の目的や費用等についてほとんど伝えられておらず、妊婦はルーチン検査だと思っていたことが問題点として抽出できた。さらに、胎児の性別の告知が、実際には妊娠中期以降に高い頻度で行なわれていた。妊婦の希望を尋ねずに性別が告げられていた例も相当数あった。母体血清マーカー検査についてはほとんど知られておらず、通常の血液検査や羊水検査と混同した回答もいくつか見られた。しかし、受検した人々による経験と意見、および受検しなかった人たちの意見から情報の提供と医師との関係について貴重な情報や知見が得られた。羊水検査受診者はわずか24名だったが、その受診理由や結果についての感想などが詳しく記述されていたので、意思決定におけるさまざまな要因が把握できた。 聞き取り調査は、自発的に協力の返信をもらった26名に実施した。まず、超音波検査について医療者から提供される情報は少ないが妊婦は一定の知識を有し、より多くの頻度の検査を望む妊婦が多いことがわかった。ただし、検査の目的などについての情報が少なく、胎児の発育状況の把握だけではなく、異常発見の目的でも実施されていることが知られておらず、なんらかの異常が見つかった際に不安になることが少なくないことがわかった。母体血清マーカー検査や羊水検査では、受検した人たちのほとんどは医療者から詳しい説明を受け、自分たちで意思決定をしたと述べたが、受検しなかった人たちは、医師が説明しなかったことを「自分は検査を受けなくても良い」と解釈し、医師が決定したと説明する人々が少なくなかった。聞き取り調査の協力者は胎児診断という手段が生じたことにより、もしも胎児に障害がある場合にどうするかについて深く考えており、夫婦間での話し合いがもたれていたことがわかった。また、障害によって妊娠の継続を決定することを避けたいという意識から検査を受けないという傾向も見られた。また、医師または医療者との情報や意見の交換はほとんどなされておらず、医療者は単に検査の存在についての情報を提示するだけの存在として語られた。 これらの結果がら研究代表者および昨年までの研究代表者、そして研究協力者がそれぞれ論文や学会発表等の準備をすすめている。
|
Research Products
(5 results)