2003 Fiscal Year Annual Research Report
環境NPO(民間非営利組織)の制度化と機能に関する環境社会学的比較研究
Project/Area Number |
14597006
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Research Institution | Tsuru University |
Principal Investigator |
寺田 良一 都留文科大学, 文学部, 教授 (00163923)
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Keywords | 環境NPO / 環境社会学 / 環境運動 / 制度化 |
Research Abstract |
1998年の「NPO法」の施行以来、日本においても、小規模な任意団体が主であった環境運動組織が環境NPOとして組織化、制度化され、政策決定に対する影響力や圧力行使、対抗的政策提言活動等を行う基盤がささやかながら整備された。本研究においては、環境NPOの公式的な組織化、制度化以降の環境運動組織の機能変容、政策提言(アドボカシー)能力や社会的影響力の増大等を、主として定性的に明らかにすることがめざされた。 比較的NPOとしての公式化、制度化が進んだアドボカシー型環境NPOを中心として聞き取り調査を広範に進めた結果、以下のようないくつかの貴重な知見が得られた。 第1に、NPOとしての組織化の経緯から、a)海外の既存の環境NPOの日本支部的に発展してきたもの、b)国内において比較的長期間環境運動や消費者運動としての活動実績を持ち、NPO制度の確立とともにそれへと組織化されたもの、c)比較的最近の環境問題に対応して活動を開始し、当初から環境NPOの形態を採っているもの、といった類型が得られた。NPO化に伴う国際化の進展は、主として活動課題に左右されるが、概して海外に本部を持つ既存の環境NPOや新興環境NPOで比較的進展が見られる。全体として、税制優遇や寄付控除制度等を欠いた日本の不十分なNPO制度ゆえに、財政基盤や政治的影響力は脆弱である。このこともあり、日本においては、まだ環境NPOの制度化とともに環境運動が運動的性格を減じ、事業化や政治的従属化はさほど進行していない。国際的な環境政策決定において環境NPOの影響力が大きい他の先進諸国と比較して、日本の環境NPOの基盤の脆弱さゆえに、環境政策決定において日本が国際的取り残されることを懸念するNPOの声も多く、より一層の基盤確立のニーズが認識されている。
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