2004 Fiscal Year Annual Research Report
高令者に介護保険サービスを提供するNPOのアカウンタビリティジレンマに関する研究
Project/Area Number |
14597011
|
Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
須田 木綿子 東洋大学, 社会学部, 教授 (60339207)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西田 真寿美 岡山大学, 医学部, 教授 (70128065)
|
Keywords | 介護保険 / NPO法人 / 社会福祉法人 / 医療法人 / アカウンタビリテイジレンマ |
Research Abstract |
平成14年度には、介護保険サービスを提供する全国のNPO法人1254団体に郵送法によるアンケート調査を実施し、688団体(54.9%)から有効回答を得た。組織運営上の方針に関する質問で得られた回答について因子分析を行った結果、「クライエントの利益尊重」「採算性重視」「「シェア拡大重視」の3因子が抽出された。さらに因子分析にもとづいて各団体の因子得点を算出し、介護保険制度制定前より高齢者介護に関わる活動を行っていたNPO法人と介護保険後に活動を開始したNPO法人について比較したところ、「クライエントの利益尊重」「シェア拡大重視」では差は見られなかったものの、「採算性重視」の因子得点で有意差が検出された(p<0.00)。以上から、新しく活動を開始したNPO法人ほど「採算性重視」の傾向が強く、アカウンタビリテイジレンマのバランスのはかり方は変化しつつある様子が明らかとなった。成果は論文として学術雑誌に発表した。 平成15年度には、介護保険が組織運営に与えた影響を把握するための次元を明らかにすることを目的に、特別養護老人ホームを運営する施設長4人にインタビュー調査を実施した。得られたデータは質的研究法に基づくインタビューデータの分析を行った。その結果、現場ケアへの影響は、「ケアの対象」「入居者との関係」「三大介護の比重」「職員に求められる技能」「歳入・歳出構造と人員配置」の視点から、組織的対応としては、「財政上の対応」「サービス向上の取り組み」「価値・理念」「職員のモラール維持・向上の取り組み」の視点から把握しうることがわかった。また、これら要因間の撹乱因子として、「施設長のバックグラウンド」と、介護保険後の体制について抱く「危機感の内容」があげられた。成果は、学術雑誌に論文として発表した。 さらに、上記の郵送法による調査と質的研究では把握しきれなかった介護保険事業者の全体像を把握するために、東京都葛飾区と秋田県大館市・田代町で活動する介護保険指定事業者(行政と営利組織を服務)への電話調査を実施した。 また、介護保険サービスを提供するNPO(社会福祉法人、医療法人、NPO法人)のアカウンタビリテイジレンマの背景について、公益性の視点と政策科学的視点の2点について理論的検討をすすめ、前者の成果は著書として発表した。後者の一部は福祉社会学会誌に論文として受稿されており、一部は"Devolution and Privatization Proceeded and the Centralized System Maintained : A Twisted Reality Faced by Japanese Nonprofit Organizations"としてアメリカNPO学会誌に投稿中である。
|
Research Products
(3 results)
-
-
-
[Book] アメリカ社会保障の光と陰2004
Author(s)
住居広士, 伊原和人, MMC総研, 須田木綿子
Total Pages
334
Publisher
大学教育出版会
Description
「研究成果報告書概要(和文)」より