2002 Fiscal Year Annual Research Report
章炳麟の哲学思想と日本明治30年代思潮との比較考察
Project/Area Number |
14651003
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
小林 武 京都産業大学, 文化学部, 教授 (20107121)
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Keywords | 章柄麟 / 『〓書』 / 明治思潮 / 姉崎正治 / 民族主義 |
Research Abstract |
本年度は、(1)章柄麟の主著の一つである『〓書』と彼の『民報』期の諸論文に引用された日本書の出典を精査し、とくに(2)『〓書』と彼の『民報』期論文にみえる姉崎正治と章柄麟との思想的関係について調べた。 (1)『〓書』は1900年に出版された初刻本、1904年に重訂された重訂本を経、内容が増刪されて『検論』になったが、その間にそれぞれ修改を受けたテクストがある。初刻本で言及された日本人・日本書はきわめてわずかだが、重訂本になると、姉崎正治をはじめとして遠藤隆吉・桑木厳翼・白河次郎・有賀長雄・渋江保など、その数が増した。重訂本は、文明史観や宗教学・人類学・修辞学などによって、中国を普遍性の眼で捉え直す傾向が強い。この知見を提供したのが、明治思潮と日本書であった。『〓書』に見える日本書の出典を可能な限り精査して、『〓書』における日本書引用の仕方を検討し、さらに章柄麟に一貫する民族主義に、初刻本には見られなかったラクーペリーの中国西方起源説が微妙な陰翳を与えたことを、明治思潮とも比較して明らかにした。(2)章柄麟とヨーロッパ思想との関係では、社会進化論以外に、カント・ショーペンハウエルなどが、印度思想との関係では古代宗教思想が重要である。『〓書』期と『民報』期の間に、章柄麟の思想的画期があり、ヨーロッパ思想に対する彼の評価もそれに応じて変化するが、宗教学者姉崎正治は、『〓書』や『民報』期論文においてよく言及されているので、章柄麟の上記の知識内容を、姉崎の当該論文や著作のなかに調査して思想上の影響を考察し、そして章柄麟の姉崎に対する評価の変遷を探った。
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