2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14651020
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤田 和生 京都大学, 大学院・文学研究科, 教授 (80183101)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 悟 北海道大学, 大学院・工学研究科, 助手 (30344477)
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Keywords | メタ認知 / 自己認知 / 心の理論 / 幼児 / 霊長類 / 認知発達 / 意図理解 / 比較認知科学 |
Research Abstract |
本年度は、幼稚園児における「行動の遂行」と「目標の設定」のメタ認識に関する実験をおこなうとともに、フサオマキザルおよびリスザルを対象に、他者の行動の予測能力を検討した。 幼児に、画面上のキャラクタをジョイスティックで操作し、宝箱中の宝物を見つけるゲーム課題を与えた。宝物を1つ選ばせた後、4つの箱の中身を示す地図を見せ、選んだ宝物の場所へキャラクタを連れて行くよう教示した。この課題遂行中に、ジョイスティックの操作とキャラクタの動きの関係、および宝物の位置を操作し、「行為の遂行」に関わる随伴性と「目標の設定」の変化に対し、幼児がいかに応答するかを分析した。 ジョイスティック操作を分析したところ、幼児は随伴性が変化するとすぐに操作法を変化させ、年長児ほど変化に要する時間は短かいことがわかった。また「目標」が入れ替わると被験児は操作を一旦中止し、その後新たな戦略で状況に対処した。これらの結果は、幼児が自身の目標を認識しており、そのために必要な動作を計画して行動していることを示す。 この結果に基づき、(1)「行動の遂行』、「目標の設定」は個別の予測機構を持つ「機能部品」として構成される、(2)各機能部品は「スーパーバイザ」により管理される、(3)各機能部品、並びに各機能部品とスーパーバイザ間の管理関係を内部モデルを用いて予測する「自己予測器」が存在する、という特徴を持つ概念モデルを提案した。 他者の行動予測については、実験者が一方のサルの名を呼びながらそのサルに給餌する場面と、逆に他方のサルに給餌する場面を設定した。その結果フサオマキザルでは、呼ばれたサルは、他個体が給餌されると実験者を長く凝視した。一方、この場面を観察していた第3の個体は特に反応の違いを示さなかった。すなわちサルは、自身に向けられた他者の行動をある程度予測できるが、他個体に向けられた他者の行動の予測はできないことが示唆された。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 藤田和生: "知性の起源.(霊長類の比較発達心理学69)"発達. 90. 105-112 (2002)
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[Publications] 藤田和生: "子供と動物は正直というけれど:社会的知性の進化と発達"第16回「大学と科学」公開シンポジウム講演収録集、『心の発達、ことばの発達-子供はなにをどのように学ぶのか』,クバプロ. 22-34 (2002)
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[Publications] 藤田和生: "動物ばんざい-比較認知科学のすすめ-"Kの会(編)「心理学の方法」,ナカニシヤ出版. 89-107 (2002)
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[Publications] 石川悟, 藤田和生, 桑畑裕子: "生物学的運動の知覚"友永雅己, 田中正之, 松沢哲郎 (編著)「チンパンジーの認知と行動の発達」,京都大学学術出版会. 77-82 (2003)
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[Publications] 石川悟, 伊藤亜季, 大森隆司, 藤田和生: "幼児におけるゲームプレイ中の自己認識とそのモデル化の研究"文部科学省21世紀型革新的先端ライフサイエンス技術開発プロジェクト(新世紀重点研究創生プラン RR2002)『動的インタラクションによるコミュニケーション創発機構の構成と解明』平成14年度研究成果報告書. 154 (2003)