2003 Fiscal Year Annual Research Report
日本語を母語とする幼児の第二言語(外国語)学習における記憶メカニズム
Project/Area Number |
14651029
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
松見 法男 広島大学, 大学院・教育学研究科, 助教授 (40263652)
|
Keywords | 幼児 / 第二言語学習 / 英語単語 / カタカナ表記語 / 聴き取り / 音韻類似性 / ディジットスパンテスト / 音韻的短期記憶 |
Research Abstract |
平成15年度は,「日本語を母語とする幼児の英語学習において,英語からの借用語としてカタカナ表記される日本語単語の音韻表象はどのような影響を与えるか」を明らかにするため,英語単語の聴解課題を用いた実験を行った。被験児は,英語未習の幼稚園年長児27名であった。材料は,カタカナで表記されうる日本語単語20個(動物,果物,家具,乗り物の4カテゴリーそれぞれに5単語)と,その原語である英語単語20個,さらにそれらのカラー写真(一部はカラー絵)20枚であった。日本語単語と英語単語の音韻類似性は,成人の日本語母語話者による平均評定値に基づいて設定された。実験は個別に行われた。被験児は,ヘッドホンから流れる英語単語(英語母語話者による発音)を1個ずつ聴き,それが表すものをできるだけ早く,5枚の写真カードから選ぶ(1枚を指差す)ように教示された。測度は正答率と反応時間であった。英語単語の聴解課題終了後,高速視覚呈示による写真カードについての命名課題と,日本語音の聴覚呈示によるディジットスパンテストが行われた。 実験の結果,成人の日本語母語話者による音韻類似性の平均評定値と幼児の正答率との間では,相関が弱いことがわかった。英語単語との音韻類似性が高い(と評定された)日本語単語でも,幼児においては,その音韻表象が英語単語の聴き取りを必ずしも促進するとはいえない。音韻類似性が高くてもアクセントが異なる単語(ライオン,オレンジなど)や,英語からの借用語以外に高頻度の命名語をもつもの(ドッグ,アップルなど)は,カタカナ表記語の日本語音と英語音との連合が強く形成されない可能性がある。また,ディジットスパンテスト得点の高低によって聴解課題の正答率に差が生じることもわかった。第二言語としての英語単語の聴き取りには,音韻情報を一時的に保持する音韻的短期記憶の容量が要因の一つとして関わることが示唆された。
|