2002 Fiscal Year Annual Research Report
新たな貧困測定・貧困分析の方法の開発に関する基礎的研究
Project/Area Number |
14651037
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
平岡 公一 お茶の水女子大学, 文教育学部, 教授 (10181140)
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Keywords | 貧困 / 相対的剥奪 / 社会的排除 / 公的扶助 / 貧困概念 / 貧困の測定 |
Research Abstract |
2カ年の研究の初年度にあたる平成14年度においては、まず第一に、本研究課題に関するイギリス・フランス等の先進諸国における研究動向を把握するために、文献・資料の収集を行い、収集した文献・資料に基づいて、先行研究の検討を行った。当初は、もっぱら貧困調査の調査設計・分析方法に焦点をあてて検討を進める計画であったが、実際には、もう少し幅広く貧困分析の視点や枠組み、貧困および関連概念の分析、あるいは貧困に対応する政策の展開なども含めて検討を進める必要があることが明らかになり、それらの点を含めた検討を行うこととした。具体的には、特に以下の点に着目して、検討をすすめている。 第一に、研究代表者がこれまで着目してきた相対的剥奪(relative deprivation)の概念に加えて、欧州諸国で広く使われている社会的排除(social exclusion)の概念とその測定方法についての検討が必要であることが明らかになった。ただし、この概念の定義や、この概念を用いることの有効性については、研究者間で見解の相違がみられ、また、特定の政策との関連でこの概念が定義される場合が少なくないことから、この概念の理論的・政策的な意義や、この概念を中核にすえた貧困分析の枠組みの検討もあわせて進めていく必要があると考えられる。 第二に、貧困および関連概念の理論的な分析にあたっては、社会構成主義的な観点を取り入れる必要があると考えられる。 第三に、政策科学的な観点からの貧困の測定・分析においては、公的扶助制度や雇用・失業保険等の諸施策の機能の分析・評価と関連づけることが不可欠と考えられる。 こうした先行研究の検討に加えて、本研究では、研究代表者自身が過去に実施した調査(高齢期と社会的不平等に関する調査)のデータを用いて、貧困・低所得層の形成過程の分析と、相対的剥奪指標の作成方法の改善の検討を行った。
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