2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14651046
|
Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
遠藤 徹 同志社大学, 言語文化教育研究センター, 助教授 (10309073)
|
Keywords | 沈黙の春 / サイボーグ研究 / サイケデリック・ムーヴメント / 薬害問題 / 食品添加物 |
Research Abstract |
昨年度の研究を引き継ぐかたちで、本年度も焦点を六十年代に置いた。当初は、二十世紀後半全体を考察することを目指していたが、三年間という時間的枠組みのなかではむしろ、六十年代という大きな転機となった時代を詳細に検討することにこそ意義があると気づいたからである。両大戦特に第二次世界大戦において軍需物資として開発され、戦後民生用へと用途が転換されることによって大量に社会に氾濫することになった化学物質が、いかに六十年代という時代を揺さぶったのかを主要な研究テーマに据えることにした。一方には『沈黙の春』に始まり、薬害、食品添加物問題などに見られた化学物質に対するアンチの姿勢があった。が、この時代、他方では経口避妊薬ピルの解禁に始まり、NASAの宇宙開発計画の一部として推し進められたサイボーグ研究や、大学の心理学研究室から巷に氾濫していったドラッグなどのように化学物質を肯定的なものとして捉える姿勢もあった。表面的にはこのような対立として見られる現象だが、より深いところでは、開かれた系である人間が、それらの化学物質によって変容することを容認するか、拒絶するかというアイデンティティ・クライシスの問題が潜んでいる。このことは、現代の狂牛病やエイズ、あるいは昨今のSARSや鶏インフルエンザの問題が突きつけているものと同じ問題が示唆されていたことになる。食べたり感染したりというかたちで否応なく外界を身体内部に取り込まねばならない人間の問題がそこには見られる。また、研究成果の一部として「身体の変容」をめぐる論文を、『モードと身体』(角川書店)に寄稿した。
|
Research Products
(1 results)