2002 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀国際関係における「少数民族問題」-「少数民族保護」政策と国際連盟を中心に
Project/Area Number |
14651072
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
水野 博子 大阪大学, 言語文化部, 講師 (20335392)
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Keywords | 「少数民族保護」条約 / 国際連盟 / 住民交換 / 中東欧現代史 |
Research Abstract |
本研究は1920年代の国際連盟による「少数民族保護」政策について国際関係史の観点から考察することを目的としている。そこで今年度は、本テーマがわが国においてはもとより世界的にみても文字通り「萌芽期」にある点に鑑み、欧米における研究の蓄積を中心に文献を収集しデータベースの作成を行なった。現在までに収集した文献・史料の扱う「マイノリティ」は、主に第二次世界大戦以前の「ドイツ系マイノリティ」、ハンガリー及びルーマニア間にあるトランシルヴァニア地方の「少数者」、さらに、徐々にではあるが国境線の「引きなおし」によって生じた旧ユーゴスラヴィア地域のマイノリティ問題や、ギリシャ・トルコ間の「住民交換」によって生じた「国内マイノリティ」など多岐にわたる。しかしこれらの文献の多くは、個別の国民国家とマイノリティと連盟という関係で詳細に考察しているが、国際連盟という超国家的な機関の役割をマイノリティ問題から捉えるという視点をほとんど持たない。したがって、一方で連盟の中心をなした諸大国の論理と帝国主義の思想を、他方ではマイノリティ問題を国民国家建設によって解決するという「民族自決」の原則の幻想と「支配・被支配」の構造の再生産という国際連盟主導の国際関係の矛盾を考察するために次年度以降はさらに基礎文献を整理した後、具体的な史料調査を行なう。特にロンドンの外交文書館に存在することが確認済みの「国際連盟とマイノリティ」に関する膨大な史料を調査する必要があろう。なお、2002年7月に国内の中東欧研究者を大阪に招聘し、中東欧地域における「マイノリティ」問題の歴史的背景と現状について、特にハンガリーを中心にワークショップを組織した。また、国内における主要学会に参加し、様々な方面の研究者と意見交換を行なった。2003年秋にはソウルで開催予定の国際シンポジウムにおいて研究成果の部を発表することが確定している。
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