2004 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀末フランスにおける家族の規制と「社会的なもの」の役割
Project/Area Number |
14652003
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
佐々木 允臣 島根大学, 法文学部, 教授 (10032624)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
波多野 敏 島根大学, 法文学部, 教授 (70218486)
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Keywords | 社会 / 家族 / 19世紀 / フランス / 社会法 |
Research Abstract |
本年度は、革命期の議会資料、民法典審議録などを調査研究するとともに、19世紀末の家族の規制に関する法律の審議過程に関する資料を調査した。また、以上のような資料に則した調査研究と同時に、こうした変化の理論的解明のために、法理論や人権論、さらにこうした理論の前提とする人間観、社会観の変容についての理論的考察を行なった。 その結果明らかにされたことは、革命期の社会法的な規制の構造は現在の社会法とはいくつかの点で相違があり、19世紀末に現れてくる家族の規制のありようが、現在の社会法と呼ばれる法規制のあり方の基本構造を生みだしていることである。 革命の後半からナポレオン法典編纂期にかけて、国家による社会法的な規制が後退してゆくなかで、国家と社会が明確に分離された。ナポレオン法典では実質的には家父長のみが法的主体となるが、この家父長の連合体としての「社会」が、国家とは一線を画し、貧民援助、教育、犯罪者の更生などさまざまな慈善事業と通して「社会」的な活動を行なっていたのが19世紀半ばまでの状況であった。しかし、19世紀半ば以降、国家は適切な資質を持たない家父長に代わって「社会」的な領域に直接に介入し始める。こうした国家介入の領域が、この時期には「社会」と呼ばれるようになる。 さらに、これがあたかも独立した自律的な領域であるかのごとく想定され、そうした「社会」を研究対象として「社会学」という名を持った学問領域が展開し始める。こうした動きが法学分野で表れるのが、「法社会学」と呼ばれる学問である。こうした学問では、「社会」は一定の独立した中立的な対象とされるが、これは政治の介入を隠蔽し、同時に政治的な活動の根拠づける理論装置として機能するようになるのである。 今後の研究では、こうした政治的機能をより具体的に解明することが課題となるであろう。
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Research Products
(2 results)