2002 Fiscal Year Annual Research Report
厚生経済学的アプローチによる信用リスクの市場顕示の分析
Project/Area Number |
14653001
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
金子 文洋 千葉大学, 法経学部, 助教授 (30302524)
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Keywords | 非完備金融市場 / 信用リスク / デフォルト / 法定担保 / 一般均衡 / 制度的制約下のパレート最適性 |
Research Abstract |
本年度は、契約市場において信用リスクを市場変数に反映させる一般均衡モデル作りに終始した。まず非完備金融市場における信用リスクの取り扱いについて、米国の最新研究動向をワーキングペーパーやディスカッションペーパーを中心に収集して調査し、以下の3つが主要なアプローチであることがわかった。 (1)多種多様な保険の自由売買市場を創設する。 (2)各契約の売り手に外生的な法定担保を要求する。 (3)各契約について平均デフォルト率を市場変数として明示する。 このうち(1)では、契約の買い手に対する逆選択が存在することと売り手による計画的デフォルトが不可能なことから、社会的厚生の面で積極酌な意義を見つけるのが難しいことが資料より判明した。(2)では、どんな法定担保レベルに対しても制度的制約の下で社会的厚生のパレート最適性が保証されることが資料より確認されたが、「市場変数による信用リスクの顕示」が実現されていないので、担保レベルが内生的に決定されるモデルとそれに適切な厚生基準を現在開発中である。(3)については、各投資家への外生的なデフォルトペナルティーと売量制約という制度的制約下では一般均衡が最適であろうという予想を持つに至り、現在その証明を作成途上にある。ただし、平均デフォルト率の合理的一意予想やその均衡における自己実現性など、現実では不自然な仮定・性質が少なくないので、担保レベルを内生化するモデルの均衡における厚生経済学的性質の分析を優先させている。また、制度的制約をできるだけ少なくした場合の均衡の存在証明にはグラスマン多様体やインデックス理論などの微分位相・代数位相の知識が不可欠であるという認識を持ち、必要とされる数学概念および定理の理解を収集した数学研究書を基に整理した。
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