2003 Fiscal Year Annual Research Report
厚生経済学的アプローチによる信用リスクの市場顕示の分析
Project/Area Number |
14653001
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
金子 文洋 千葉大学, 法経学部, 助教授 (30302524)
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Keywords | 信用リスク / デフォルト / 制度制約付パレート最適性 / 期待効用理論 / 危険回避度 / 危険慎重度 |
Research Abstract |
本年度の前半は、金融経済モデルにおいて、デフォルトに対する担保レベルが内生化されたときの一般均衡を対象に、その厚生経済学的性質の分析を行った。いくつかの数値例を作成し、均衡が制度制約付パレート最適性を満たさない場合があること、およびそうしたケースが無視できないことを確認した。この中で、均衡外での調整において、市場における担保レベルの自由な変動が逃れられない所得ショックとして投資家に認識され、それによって投資家がとれるリスクの種類や量が減り、均衡への調節過程がそもそも働かないのではないか、ということに気が付いた。そこで本年度の後半では、逃れられない不確実かつ不利な所得ショックを受けたときに投資家がどのような危険回避的行動をとるか、その予測可能性について、米国の最新研究動向を発表論文およびワーキングペーパー・ディスカッションペーパーから調査し、その統一的解釈の確立に終始した。調査および分析は期待効用理論に限って行った。不確実な所得ショックがあるとそれと独立なリスクがとれなくなる場合、そうしたショックが背景リスクを「悪化」させるという場合に大きく分けて4つの異なる定式化があり、減少的絶対危険回避度(DARA)の他に少しずつ異なる制約を基礎的効用関数に課すことが文献調査によって判明した。しかしながら、異なるとは言っても、比較静学や関数の特徴付けについて重要なのは、基礎的効用関数の正値になるように符号を調整した1回微分や2回微分がDARAであること(同じことであるがそれらの対数変換関数が凸関数であること)であるのは共通であり、こうした性質がより高階の微分に成立するにしたがい関数がラプラス変換に収束することがわかった。現在、これらの比較静学や関数の特徴つけの結果の行動学的統一解釈に努めているとともに、上記の性質を高階微分に適用することがどのような背景リスクの悪化に対する危険回避的行動につながるのか、行動学的意味を模索中である。
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