2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14654040
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
和田 桂一 国立天文台, 位置天文・天体力学研究系, 助教授 (30261358)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小久保 英一郎 国立天文台, 理論天文学研究系, 助手 (90332163)
牧野 淳一郎 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (50229340)
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Keywords | 惑星形成 / 数値流体力学 / N体計算 |
Research Abstract |
月がどのように誕生したか、なぜ我々の月は、他の惑星の衛星に比べて極端に大きいのか、は古くからの「謎」であり、多くの仮説が提唱されてきた。その中で、最後に生き残ったシナリオは、原始地球に火星程度の大きさの原始惑星が衝突し、その残骸の周地球円盤から月が形成されたという、「巨大衝突仮説」である。その拠り所の一つが、A.Cameronのグループによって行われてきたSPH法を用いた一連の数値実験であり、最近では、同様の計算手法を用いて、R.Canupらが「巨大衝突仮説」を支持する論文をNatureに掲載した。 一方、我々は、Cameron,Canupらの数値実験は、多くの点で信用できないと考えた。最大の問題は、彼らは低密度領域で精度が悪いSPH法を採用したために、周地球円盤のSPH粒子が高々100個程度しかなく、有効空間分解能が円盤の半径程度しかないという点にある。これでは巨大衝突の際の衝撃波をはじめ物理を正しく扱えていないのは明白である。本研究ではCameronグループの数値計算法とはまったく異なる高精度の3次元Euler-Mesh数値流体コードを用いて、巨大衝突仮説の再検証を行った。周地球円盤領域の格子点数は2000万点を越える。これまで得られた結果からは、原始地球に質量が1/5程度の原始惑星が「かすめるように」衝突することで、月質量の2倍程度の厚い周地球円盤がロッシュ半径内に形成されることが示された。しかし、その円盤の質量、角運動量と、月集積過程のN体実験結果(Kokubo et al. 2001)を用いて予想される月質量は数日のタイムスケールで急激に減少し、このモデルでは現在の月を形成することは困難であることがわかった。これらの結果について、2004年3月22日の日本天文学会春季年会(会場:名古屋大学)の「太陽系」セッションにおいて、和田が「月の起源-本当に巨大衝突で形成されたのか?-」と題する口頭発表を行い、海外専門誌への投稿の準備中である。
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