2002 Fiscal Year Annual Research Report
単一電子トランジスタにおける圧力によるクーロン振動
Project/Area Number |
14654058
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
大塚 洋一 筑波大学, 物理学系, 教授 (50126009)
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Keywords | 単一電子トランジスタ / クーロン振動 / 圧力 / 変形ポテンシャル |
Research Abstract |
単一電子トランジスタ(SET)は電荷に対する高い感度を持つデバイスであることが知られているが、これまでに我々が行った磁性金属を用いたSETについての研究結果を敷衍すると、SETは圧力や一軸性応力に対しても感度を有し、圧力の変化によって抵抗が振動することが予想される。本研究はこのような圧力誘起クーロン振動現象の確認を目的とする。本年度は以下の研究を行った。 1.液体ヘリウム温度での実験を可能にするために、接合面積30nmx30nm程度の微小トンネル接合を有するAlとCuを材料としたSETを電子線リソグラフィーによって作製した。 2.高圧容器に入れたAl/Cu/Al-SET試料が2Kで十分大きなクーロン振動を示すことを確認した。高圧ヘリウムを導入し容器内の圧力を変えたところ、クーロン振動の位相が圧力と共にほぼ単調に変化した。すなわち圧力によるクーロン振動が起きることを確認した。 3.島電極とリードの材料の組み合わせを変えたCu/Al/Cu-SETについても同様な測定を行い、圧力誘起クーロン振動を観測したが、位相の変化方向は同じであった。また、Al/Al/Al-SETについても同様な変化が見られた。これらは当初予想した機構による圧力誘起クーロン振動で期待されるものとは一致しない。 4.ガス加圧法では広い圧力範囲を得ることが困難であり、またジュール・トムソン効果により圧力の変化には温度の変動が伴う。この欠点を避けるためピストンを用いた実験装置を作製し実験を行った。この実験でもほぼ同様な実験結果が得られた。 5.このように圧力によるクーロン振動を初めて観測したが、その性質は当初予想したものとは異なる。今後その機構についての考察をすすめる。なお、これらの成果は論文として公表すべく準備中である。
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