2002 Fiscal Year Annual Research Report
貝殻成長線と安定同位体の分析に基づく軟体動物の生活史形質の抽出の試み
Project/Area Number |
14654087
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
棚部 一成 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (20108640)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SCHONE Bernd Reinhald 東京大学, 大学院・理学系研究科, 外国人特別研究員
佐藤 慎一 東北大学, 総合学術博物館, 助手 (70332525)
佐々木 猛智 東京大学, 総合研究博物館, 助手 (70313195)
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Keywords | 貝殻成長線 / 安定同位体 / 軟体動物 / 生活史形質 / 高精度環境解析 |
Research Abstract |
1.現生カガミガイに関する研究成果 瀬戸内海、東京湾の干潟および函館湾の潮下帯で採集され、長期成長追跡を行ったマルスダレガイ科二枚貝カガミガイの貝殻微細成長線の付加様式を詳細に調べ、貝殻の酸素同位体比分析結果および各地域での生息環境の経年変化データと比較検討した。その結果、1)微細成長線の付加パターンは潮汐サイクルを反映し、2本の成長線は1月齢日(24時間50分)ごとに形成されること、2)年間成長量および成長日数は年齢とともに減少し、同じ年齢で比較すると貝殻の年間を通じての成長期間は場所毎に異なり、高緯度の個体ほど成長期間が短くなる傾向にあること。3)成長が停止する水温、および最適成長水温は、瀬戸内海・東京湾・函館湾でほぼ一定で、それぞれ14.2-16.8℃、24.6-27.2℃となること、などが確かめられた。以上のことから、カガミガイの殻体微細成長線は、日周期の成長履歴とそれに影響を与える水温などの環境要素を記録していることがわかった。この成果は、平成14年6月の日本古生物学会年会でポスター発表、同年7月にオーストラリア、シドニー市で開催された第1回国際古生物会議において講演するとともに、Marine Biologyに公表した(Schone et al., 2003)。 2.化石カガミガイに関する研究成果 さらに、Schoneと棚部は、横須賀市博物館の蟹江康光博士と共同で同館収蔵の縄文時代および弥生時代遺跡から採集された化石カガミガイ標本を用いて、微細成長線の付加様式と貝殻の酸素同位体比の分析を行ない、現生試料から得られた成果と詳細に比較検討した。その結果、当時の冬期は現在より温暖で、冬から夏までの植物プランクトン量も豊富であったことや、夏期のモンスーンの影響は現在より弱く、比較的乾燥し冷温の環境下にあったことが示唆された。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Sato, T., Azuma, M.: "Ecological and paleoecological implications of the rapid increase and decrease of an introduced bivalve Potamocorbula sp. after the construction of a reclamation dike in Isahaya Bay, Western Kyushu, Japan"Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology. 185巻. 369-378 (2002)
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[Publications] 佐藤 慎一: "大規模干拓堤防建設に伴う貝類群集の変化"日本ベントス学会誌. 57巻. 106-118 (2002)
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[Publications] Sasaki, T., Ishikawa, H.: "The first occurrence of a neritopsine gastropod from phreatic community"Journal of Molluscan Studies. 68巻. 286-288 (2002)
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[Publications] Schone, B.R., Tanabe, K., Dettman, D.L., Sato, S.: "Environmental controls on shell growth rates and δ^<18>O of the shallow-marine Bivalve mollusk Phacosoma japonicum in Japan"Marine Biology. 142巻. 473-485 (2003)