2002 Fiscal Year Annual Research Report
硫黄同位体地球化学的OAE判別手法の確立とその応用検証的展開
Project/Area Number |
14654090
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
梶原 良道 筑波大学, 地球科学系, 教授 (80015578)
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Keywords | 硫黄同位体 / 地球化学 / 同位体分別 / 海洋無酸素事変 / 構造置換態硫酸 / 硫化物 / 炭酸塩 / 古環境論 |
Research Abstract |
地質時代のOAEを識別するには生起源硫化物の同位体比とともに同時代の古海水硫酸の同位体比を知らねばならない。その目的のため、炭酸塩の構造置換態硫酸(SSS : structurally substituted sulfate)の抽出法を検討した。天然の炭酸塩試料からSSSを分離抽出するには、多少とも存在している硫化物態硫黄の二次酸化混染を避けることに最大限の注意を払う必要がある。本研究では、炭酸塩試料の酸溶解・濾過・SSS回収(BaSO4沈殿)の全処理過程を窒素ガスで置換した無酸素雰囲気のグローブボックス内で且つ濾液に窒素ガスを流しつつ迅速に行う方法を採用し、この問題を解決した。この方法により、存在する硫化物態硫黄の酸化によるSSSへの混染をほぼ完全に避けることが可能である。同抽出法を応用し、現世珊瑚炭酸塩骨格試料50個(採取地:愛媛県-高知県)の分析を行った。その結果、珊瑚骨格は平均6000ppm(最大ca.9500ppm)の高濃度のSSSを含有しており、海水溶存硫酸と殆ど等しい同位体比(ca.+21‰)を有していることが判明した。これは生物源石灰岩が海水硫酸の重要な地球化学シンクであることを証明する情報である。また、本邦ジュラ系中の石炭紀バシュキリアン(ca.320Ma)相当の珊瑚石灰岩に含まれる微量のSSS及び硫化物硫黄の分離分析を行った。その結果、石炭紀バシュキリアンの古海水硫酸同位体比(ca.+17‰)の復元に成功するとともに、SSS-硫化物間の同位体分別を指標として、当時の堆積盆がoxicな環境にあったことを明らかにした。これらは、硫黄同位体層序学の新展開を保証する成果である(印刷公表準備中)。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Ishihara, S.: "Sulfur Content and Isotopic Ratio of Cambro-Ordovician Carbonate Rocks from South Korea"Resource Geology. 52・1. 41-48 (2002)
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[Publications] Kulange, B.J.: "Cu-Fe bearing zinc sulfide from Laloki stratabound massive sulfide deposit, Papua New Guinea"Resource Geology. 52・1. 67-72 (2002)
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[Publications] Komuro, K.: "Benthic Foraminifera in Siliceous Black Ore from the Ezuri Kuroko Deposit, Hokuroku District, Japan"Resource Geology. 52・2. 111-121 (2002)
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[Publications] Ishihara, S.: "Possible Carbonate Origin of Ore Sulfur from Geumsong Mo Deposit, South Korea"Resource Geology. 52・3. 279-282 (2002)
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[Publications] Ishihara, S.: "Origin of sulfur in some magmatic-hydrothermal ore deposits of south China"Bulletin of the Geological Survey of Japan. 54・1(印刷中). (2003)