2003 Fiscal Year Annual Research Report
マントル部分熔融領域最上部でのマグマ蓄積に関する実験的研究
Project/Area Number |
14654092
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
渡邊 了 富山大学, 理学部, 助教授 (30262497)
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Keywords | 浸透流 / マントル / マグマ / 部分熔融 |
Research Abstract |
本研究の目的は,マントル部分熔融領域最上部でのマグマ蓄積過程の解明である.ナイロンビーズ+塩化アンモニウム水溶液の浸透流実験を通して,マグマ発生場でのメルトの運ぶ熱とリソスフェアからの冷却との競合過程を理解したいと考えている.今年度は,前年度に構築したシステムを用いて浸透流実験を行い,熱的競合の様子を調べた.なお,流量測定のための電子天秤を備品として15年度に導入した. 冷却温度と流量をパラメータとして変化させ,(1)水溶液による加熱が支配的な条件,(2)外部からの冷却が支配的な条件が,水溶液の冷却部での通過時間と熱伝導の特性時間との兼ね合いで決まることがわかった.熱伝導の特性時間が通過時間に比べて十分長い場合には,水溶液による加熱が支配的となり,通過する水溶液の温度低下はみられず塩化アンモニウムの析出もない.一方,熱伝導の特性時間が通過時間と同程度以下の場合には,水溶液の温度低下,溶解度の低下,ビーズ間への塩化アンモニウムの析出という一連のプロセスによって冷却部への流入が低下し,冷却がさらに進むという正のフィードバックが見られた.塩化アンモニウムの析出が続くと,一定流量に必要な液圧も高くなった.これは冷却・沈殿によってシールが形成されるということである. このシールの挙動は,シールの強度と液圧との競合で決まりそうである.冷却・沈殿に伴って増加するシールの強度が常に液圧を上回っていれば,実験システムの強度まで液圧は上昇し続ける.一方,液圧がシールの強度を上回る場合は,液圧上昇,シール破壊,沈殿によるシールの再形成というサイクルが起きそうである.現在は,シールの強度上昇率を塩化アンモニウム水溶液の濃度で制御して,このサイクルについての実験を進めている.
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