2003 Fiscal Year Annual Research Report
光励起高スピン状態から光誘起分子磁性体へのブレイクスルー
Project/Area Number |
14654101
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山内 清語 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (10127152)
|
Keywords | 分子磁性 / 励起高スピン / 三重項-ラジカル対 / ナノ磁性 / ラジカル結晶 / 励起三重項ポルフィリン / ポルフィリンラジカル置換体 / 励起多重項 |
Research Abstract |
今年度は,これまで研究してきたポルフィリンやフラーレンダイマーなどのポリマー+ラジカルタイプとは異なり,ラジカル置換ポルフィリン分子からなる結晶の作成や励起三重項-ラジカル対系における励起状態寿命の制御に関する研究を行ない,次のような結果を得た. 1.イットリクム(Y)ポルフィリンにアクアク結合を通してキノリン-ラジカル分子を結合させた分子の合成に成功した.この分子は新しいタイプの励起三重項-ラジカル系を構築する.さらに重要なことに,この分子からなる単結晶の作成に成功し,X線回折による構解析から,結晶全体にラジカルネットワークが生成していることがわかった. 2.エトキシ基がポルフィリンの窒素原子Nに結合したラジカルポルフィリンからなる2つ目のラジカル結晶の作成に成功した. 3.1と2の結晶のESR信号が観測され,ラジカル結晶であることが確認された.今後,光照射下におけるESR信号と磁化率の測定を予定している.光によるESR信号や磁化率の変化が期待され,これにより光誘起分子磁性への道が広がると考えられる. 4.ポルフィリン-ラジカル系の新たな展開として,2個のラジカルが結合した系やラジカル置換位置の異なる分子を合成して,励起寿命へのラジカルと溶媒の効果を検討した.その結果,ラジカル数の増加と溶媒の極性の増加とともに著しく励起寿命が短くなることがわかった.これらの結果は,励起三重項とラジカル間の交換相互作用の大きさで解析された. 5.XバンドとWバンドESRスペクトルのg値と線幅の解析を行った.また,これらのESRパラメータから励起多重項間の項間交差速度を求める方法を開発した.この方法により,極性溶媒は,励起二重項の寿命を短くするが,項間交差過程には影響を及ぼさないことがわかった.
|
Research Products
(4 results)
-
[Publications] Y.Iwasaki et al.: "On the g Value Shift and Intersystem Crossing in Photo-Excited Radical- Triplet Systems"Appl.Magn.Reson.. 23. 377-391 (2003)
-
[Publications] N.Hirota et al.: "Short-lived Excited Triplet States Studied by Time-Resolved EPR Spectroscopy"J.Photochem.Photobio.C. 4. 109-124 (2003)
-
[Publications] Y.Ohba et al.: "Structures and Electronic States oh Phtoexcited States in a System of Two Nitroxide Radicals Linked Fullerene Studied by Two Dimensional Pulsed Nutation and TTREPR"Appl.Magn.Reson.. (in press). (2004)
-
[Publications] S.Yamauchi: "Recent Developments in Studies of Electronic Excited States by Means of Electron Paramagnetic Resonance Spectroscopy"Bull.Chem.Soc.Jpn.. (in press). (2004)