2002 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属錯体による位置選択的なメチレン炭素―水素結合活性化法の開発
Project/Area Number |
14654110
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
草間 博之 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助教授 (30242100)
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Keywords | 炭素-水素結合活性化 / 遷移金属錯体 / 位置選択性 |
Research Abstract |
近年、遷移金属錯体の作用により化学的に不活性な炭素-水素結合を切断し、有機合成に利用する試みが行われている。しかし、有機化合物中には多くの炭素-水素結合が存在するため、実際に有用な有機合成反応を開発するためには位置選択性の問題を避けて通ることはできない。本研究では、手がかりとなる官能基から遠隔位に存在する炭素-水素結合の位置選択的切断を可能にする新しい遷移金属錯体の創製およびその有機合成反応への利用を目指し研究を行った。 剛直な構造を有するスペーサー部位を介して反応基質を捕捉する部位と炭素-水素結合を切断し得る高活性な遷移金属部位を併せ持つ新規機能性遷移金属錯体を設計・合成し、これにより捕捉された基質の基質活性化部位の近傍に位置する炭素-水素結合のみを選択的に切断することを考え、次のように分子設計を行った。まず基質として鎖状カルボン酸あるいはアルコールを用いることを想定し、基質捕捉部位として環状アミンまたは環状ホウ酸を用いてアミド結合、ホウ酸エステル結合生成により基質を捕捉することを考えた。また、炭素-水素結合活性化能を有する金属錯体に関する文献調査をもとに、インデンあるいはフェナントロリンを金属配位部位として選びインデン型錯体およびフェナントロリン型錯体の二種類の基本骨格を考案した。次いで、設計した分子の合成を検討し、効率のよい合成経路を開発することができた。さらに、こうして合成した分子を配位子として有する各種遷移金属錯体を調製し、これらの錯体の炭素-水素結合活性化能を調べた。その結果、いずれの配位子を有する錯体も、ベンゼンの炭素-水素結合を切断し得ることが明らかとなり、本研究で設計した配位子を有する錯体は十分な炭素-水素結合活性化能を有することを確認できた。これらの成果は本研究課題を実現するための基礎的知見として大変重要な成果である。
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