2003 Fiscal Year Annual Research Report
光エネルギーの高品位化を目指した人工Zスキームの構築
Project/Area Number |
14654119
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
石谷 治 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助教授 (50272282)
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Keywords | 金属錯体 / 光化学 / 人工Zスキーム / 半導体-金属錯体複合体 |
Research Abstract |
レニウムビピリジン錯体fac-[Re^I(bpy)(CO)_3L]^<n+>は、単独でCO_2還元の光触媒として働くことが知られている。しかし、これらの錯体は可視部の吸収が弱く、太陽光を有効に利用できない、また触媒の耐久性が低いという欠点がある。本研究では、可視光を効率良く吸収できるレニウムビピリジン錯体とルテニウム錯体を連結した種々の多核錯体を合成し、その光触媒特性を調べた。その結果、各錯体ユニット間の相互作用の弱い架橋配位子を用いた場合(Fig.1)、高いCO_2還元の光触媒能を示した。 ルテニウム錯体とレニウム錯体を相互作用のほとんどないbpy-C_3H_6-bpy(C_3OH)配位子で連結した系を用いることにより、COの生成量は、二核錯体[Ru-C_3OH-Re]^<2+>では、そのモデルになる単核錯体混合系の2倍、四核錯体[RU-Re_3]^<2+>では3倍になることが分かった。一方、Ru部とRe部の相互作用が比較的強い架橋配位子を用いると光触媒能は大幅に低下した。[Ru-C_3OH-Re]^<2+>の本光触媒反応は、Fig.2に示す機構で進行していると考えられる。すなわち、(1)Ru部が光励起されることによる架橋配位子への電子移動(MLCT状態の生成)と、(2)そのBNAHによる還元的消光により反応は開始する。その結果Ru部の一電子還元体ができ、次に(3)ゆっくりとしたRe部への分子内電子移動が起こる。(4)Re部の一電子還元体がCO_2を還元する。 このように、光捕集機能を有するルテニウム錯体と、二酸化炭素還元触媒能を持つレニウム錯体を連結し、有機的に働かすことのできる条件が明らかになった。これは、本研究計画の目標である人工zスキームの構築に重要な情報を与えてくれる。ルテニウムサイトを、半導体に化学結合させることにより、半導体の光励起状態とルテニウム錯体の光励起状態を順次的に発生させ、電子を半導体からレニウム触媒部に流し込むことができると予想される。今後この知見を基に、水を還元剤とした二酸化炭素の光還元が可能な人工Zスキームの構築を目指す。
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