2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14654177
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Research Institution | Meio University |
Principal Investigator |
山城 秀之 名桜大学, 国際学部, 助教授 (80341676)
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Keywords | イシサンゴ / 腫瘍 / 病気 / 代謝 / ノリコモンサンゴ / コブハマサンゴ / グルコース / タンパク質 |
Research Abstract |
本研究の目的は、腫瘍を持つサンゴの沖縄での分布や腫瘍の維持機構を明らかにすることである。平成14年度は、新型腫瘍の発見及び腫瘍組織における光合成能力の低下等の結果を得た。 平成15年度に得られた主な研究成果は下記の通りである。 (1)サンゴの生育が比較的良好であるとされる慶良間諸島で、卓状ミドリイシ類(ハナバチミドリイシ他)に広範囲かつ大量の腫瘍の発症を確認した。この地域は最重要保全区域に指定されており、拡大が懸念される。 (2)ハマサンゴ類3種の腫瘍について、ポリプ密度、褐虫藻密度、生殖巣の発達状態及び代謝量(酸素消費量)を測定した。腫瘍部では何れも密度低下等が確認でき、病的組織となっていることを明らかにした。 (3)腫瘍部骨格は重たい炭素(C-13)の割合が小さいとの研究結果があり、これまで未測定の4種のサンゴを用いて炭素同位対比を測定したところ、同様の結果を得た。 (4)コブハマサンゴとノリコモンサンゴの腫瘍組織と通常組織のクンパク質電気泳動(SDS-PAGE)を行った。コブハマサンゴの2型腫瘍のみで泳動結果に顕著な差が出た(腫瘍組織では高分子側に特徴的なバンドが現れた)。 (5)腫瘍部に向かって周りの通常組織からの栄養移動があると予測されたため、光合成により放射性炭素を固定させた通常組織に腫瘍組織を接触させ、放射性炭素の移動の有無を調べた。通常組織に固定された炭素が腫瘍組織に移動することを初めて確認した。 (6)ノリコモンサンゴを用いて、外部からグルコース(放射性)を付加し、取込率を測定したところ(暗条件下)、通常組織の取込率の方が高かったが、グルコースを基質として合成された脂質合成能で見ると逆に腫瘍の方が高いという結果を得た(ハマサンゴでは優位差がなかった)。 以上の結果より、腫瘍組織は形態及び栄養的に病的な組織であり、これを維持するために種々の代謝特性を示すことを明らかにした。この病気は拡大しており、維持機構の更なる解明が望まれる。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Hideyuki Yamashiro, Akiyuki Irikawa: "Out-break of tumor in Okinawan corals : comparative study of hard and soft tissues"Zoological Science. Vol.20 No.12. 1594 (2003)
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[Publications] 山城 秀之: "イシサンゴ類の病気-特に腫瘍について"化石研究会誌(Journal of Fossil Research). 36(1). 1-5 (2003)
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[Publications] 山城 秀之: "サンゴ礁データブック(山城分担:イシサンゴ類の病気についての現況)"環境省(印刷中). (2004)