Research Abstract |
伊豆半島,下田市南部の大浦浜を調査地として,2ヵ月ごとに大潮の干潮時に定点観測を行った.調査地では,陸側に目標物を定め,打線に対して垂直な観測線上を3mおきに堆積物試料を定量採集した.本調査地からは,Polycope japonica Hiruta,1983,Microloxoconcha sp.,Paracobanocythere sp.,parvocythere sp.の4種が年間を通じて産出した.Polycope japonicaを除いて,いずれも未記載種であった.定量された試料から得られた上記4種の貝形虫は,汀線側から陸側に向かって,Microloxoconcha sp.,Polycope japonica, Paracobanocythere sp.,Parvocythere sp.,の順に産出頻度が高くなり,砂浜の環境勾配に応じて各種が最適帯をもっていることが明らかになった.また,沖縄本島・瀬底島のサンゴ礁ビーチにおいても春と秋の2度,大浦浜と同様に定点観測を行った.ここでは,Polycope japonica Hiruta,1983,Polycope sp.,Axelheibergella sp.,Anchistrocheles sp.1,Anchistrocheles sp.2,Pusella sp.1,Pusella sp.2,Pusella sp.3,Orlovibairdia sp.,Microloxoconcha sp.2,Cytheroidea sp.1,Cytheroidea sp.2,Cobanocythere sp.,Paracobanocythere sp.2,Parvocythere sp.2,Parvocythere sp.3の計16種(うち15種が未記載種)が確認され,亜熱帯域における間隙性貝形虫類の多様性の高さが明らかになった.また,北極海に近縁種をもつ分類群Axelheibergella sp.が確認され,間隙性間隙虫類の地理的分布の成立について,深海や海底洞窟などの隠棲的群集と共通点がありそうなことが示唆された.
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