2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14655027
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
齋藤 彰 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助手 (90294024)
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Keywords | 構造色 / 多層膜 / 干渉 / 回折 / モルフォ蝶 / 擬態 / 鱗粉 / 誘電体膜 |
Research Abstract |
本研究の目的は、色素を用いないで構造色による発色膜を作ることである。その際、自然界の構造発色体(モルフォ蝶の翅など)に匹敵する特性を実現すること(高い反射率、干渉色ながらその常識に反して虹色でない擬単色性、スペックル様のきらめき)、また最終的にはその光学特性を解析して理論を検証すること、が必要である。 初年度に準備段階で、モルフォ蝶の鱗粉を走査型電子顕微鏡で精緻に観察し、生物学上興味深い事実(ミクロな擬態)を発見した。その後、肝心の表題の目的について、発色体の試作品製作を試みていた。今年度になって試作品が完成した結果、当初の理論的予想にかなり近い状態で、光学特性が再現されていることがわかった。具体的には以下の通りである。 作製にあたり、はじめに多層膜形成の前の基板として、300nm程度のランダムな粗さ(ただしモルフォ蝶の実物と同様、1次元異方性をもつ乱雑さ)をもつ石英研磨面を用意する。これが虹色干渉を抑制し、スペックルを生じ、かつ有限角度で反射率を高める条件になる。つぎに、異なる屈折率2種で構成される誘電体多層膜を、膜厚を制御しつつ蒸着する。ここで1つの工夫は、最終工程でパターニング加工により1次元溝を作製する、という困難な作業を行うのでなく、当初の基板加工の段階で、乱雑さを含めながら「溝加工を制御して」作りこむことである。この結果得られた基板は、本文冒頭に記したような、一見矛盾する要素を兼ね備えた光学特性をもつことがわかった。さらに溝加工の条件を変えて比べた結果、理論的な予想どおり、蒸着前の下加工パラメータと蒸着膜の双方が特性に効いており、それが100nmオーダーで影響することがわかった。今後この成果をもとに、より精繊な光学測定を行い、理論的な検証を詰めてゆく必要がある。さらに、社会に役立つ製品化へ向けてのコストダウン、大量生産への工夫、さまざまな波長の発色体への応用、などをこれからの課題として進めてゆく予定である。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] "「青い宝石」再現。南米のモルフォ蝶"読売新聞. 9月25日. (2003)
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[Publications] "青い蝶の輝きを再現"四国新聞、北日本新聞、ほか. 12月29日. (2003)
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[Publications] 吉岡伸也, 齋藤彰, 木下修一: "モルフォチョウの青い輝きの仕組みと再現発色基板"応用物理. 73・10(未定). (2004)