2003 Fiscal Year Annual Research Report
光電効果を利用した新しい電子線源の高輝度化に関する研究
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14655127
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
木本 高義 独立行政法人物質・材料研究機構, 材料研究所, 主席研究員 (00343864)
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Keywords | 電子線源 / 輝度 / 光電効果 / フォトカソード / レーザ / Cs_3Sb / アルゴンガス / ペルチェ冷却 |
Research Abstract |
透過型電子顕微鏡(TEM)の像分解能は高々0.1nm程度であり、電子の波長から予測できる到達可能分解能に比べて100倍以上も低い。この状況は久しく変わらず、現在のTEMは光学顕微鏡における虫眼鏡程度の像分解能しか持ち得ていない。これはTEMでは凹レンズを作製することが不可能であり、光学顕微鏡のように凹凸レンズを組み合わせて球面収差を除去することができないことに起因している。しかし、極めて輝度の高い電子線源をTEMに使用できるようになれば、1948年にGaborが提案した電子線ホログラムを利用した方法によってTEMの分解能を飛躍的に向上させることができるようになる。また、超高輝度電子線源は加速器、X線発生装置等の性能向上をも促す。本研究では、量子効率の高い物質にレーザ光を照射して多量の光電子を発生させることのできる電子線源(フォトカソード型電子線源)が極めて輝度の高い電子線源となり得ることに着目し、その高輝度化を目指した基礎研究を行っている。アルカリハライドに代表される高量子効率物質は一般的に化学的に極めて活性であり、わずかな酸素に晒してもその量子効率は急激に減少してしまう。そこで、本研究では、陰極先端部に高量子効率物質であるCs_3Sbを蒸着した後、高純度アルゴンガス雰囲気中で陰極ユニットごと密閉容器に封じ込んで蒸着装置から取り出し、Cs_3Sbを酸素に晒すことなく電子線源に装填することによってこの基本的な問題を解決した。また、陰極先端部へのレーザ照射による加熱でCs_3Sbの温度が上昇するとその量子効率が急激に低下する。そこで、ペルチェ冷却の原理を利用して特殊な陰極を作製して陰極先端部の局所冷却を行うことによりこの問題も解決した。さらに、Cs_3Sb等の最適蒸着条件を調べるため、蒸着装置内でも陰極先端にレーザ光を照射して光電子の発生量を知るための特別な装置作りにも成功した。
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