2004 Fiscal Year Annual Research Report
液体ヘリウム表面の2次元電子によるテラヘルツ電磁波の発振と検知
Project/Area Number |
14655133
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
矢山 英樹 九州大学, 大学院・理学研究院, 助教授 (60166840)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新井 敏一 京都大学, 低温物質科学研究センター, 助手 (80333318)
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Keywords | 2次元電子 / テラヘルツ / 低温 / 液体ヘリウム / 電磁波 / 表面電子 / 発振 / 検波 |
Research Abstract |
本年度の研究目的は、液体ヘリウム表面の電子系が低周波の電場で駆動したときに励起状態になっているのかどうかを確認することと、もしそうであれば励起状態から基定状態に遷移する際に電磁波を放出するはずであるからそれを観測するというものである。そこでまず、励起状態になっているのかどうかの確認を、電気伝導の非線型性を調べることで行った。その結果、駆動電圧を大きくしていくと電気伝導度の変化が見出され、ホットエレクトロン状態になりエネルギーの高い励起状態になっている可能性が高いことが分かった。しかし、この原因の他に3次元状態への遷移やリプロンの生成などによる原因も考えられ、まだ確定的でないことは言えない状態である。一方、ボロメータによるテラヘルツ電磁波の観測は、電磁波のエネルギー密度が極めて低いため困難な状態である。たとえは、すべての2次元電子が励起状態から基定状態へ遷移するのに0.1秒かかったとすると、放射のパワーは1pWのオーダーとなる。この程度のパワーによるボロメータの温度上昇は、低周波の測定系から発生する電磁場によってボロメータが受ける温度上昇と同程度またはそれ以上であるため、ノイズに埋もれた微弱信号の観測技術が必要である。実用的な観点からは、電子の表面密度の最大値が流体力学的な不安定性から限られているので、10cm×10cm度の装置では100pW程度のパワーしか得られないという短所があることが分かった。また、この電子系をテラヘルツ電磁波のセンサーとして用いた場合には、液体ヘリウムを含んだキャピティーと導波管などの装置を1K以下の低温にしなければならないという不便さはあるが、量子力学的な検波が可能であるため焦電的な方法に比べてより感度の高い方法になることが明らかになった。
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Research Products
(2 results)