2002 Fiscal Year Annual Research Report
高齢者疑似体験用具を使用した高齢者の避難行動特性の定量化の手法
Project/Area Number |
14655208
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
長谷見 雄二 早稲田大学, 理工学部, 教授 (40298138)
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Keywords | 避難 / 高齢者 / バリアフリー / 身体障害者 / 群集 |
Research Abstract |
高齢者疑似体験用具を装着した健常者である大学2年生の学生を被験者として実験を行った。本研究では、まず高齢者疑似体験用具を装着した健常者(以下「シニア」と称す)単独での歩行行動を実測し、何も装着しない場合(以下「健常者」と称す)及び視聴覚低下がない場合と比較して歩行行動特性の変化を把握した。次に、シニアと健常者が混在する群集の歩行行動について、シニアの人数と配置場所を変化させて実測を行い、シニアの存在が群集内の歩行行動特性に及ぼす影響を検討した。さらに、シニアの再現性を分析するために、被験者となった学生及び高齢者へのアンケート調査を実施した。 実験の結果、まずシニア単独での歩行行動では、視聴覚装備を装着しない場合は、全ての装備を装着した場合に比べて歩行速度の低下が小さく、視聴覚を低下させるための装備の装着が歩行に及ぼす影響は、手足を不自由にさせる装備による影響より大きいことが明らかとなった。被験者からは、「手足の重さは体力でカバーできる」という意見もあり、被験者の身体能力によっては、関節の束縛や手足のおもりが歩行行動にあまり大きな影響を及ぼさない可能性があることも判明した。 シニアと健常者が混在する群集の歩行行動では、全体の約7割のシニアが、隣接する健常者の歩行に追従して群集歩行時の歩行速度のほうが速くなった。ただし、実際の高齢者は歩行速度の調整が困難であり、同様の特性は現れないと考えられることを踏まえ、アンケート調査をもとに高齢者疑似体験用具の各パーツについて分析した結果、シニアと実際の高齢者では、周囲から受ける精神的重圧では共通点がみられたが、基本的運動・感覚能力では相違点がみられ、それには唯一強弱を設定できるサポーターの装着方法が非常に重要であることが明らかとなった。今後の課題は、同一条件のもとで実際の高齢者を被験者とした実測を行いシニアとの比較を行うことで、高齢者疑似体験用具による避難行動特性の把握における実験条件をさらに検討する。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] 吉田直之, 土屋伸一, 長谷見雄二等: "群集歩行行動における高齢者・身体障害者の影響 (その1)建築学教育における高齢者・身体障害者疑似体験の試み"2001年度日本建築学会関東支部研究報告集. 413-416 (2002)
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[Publications] 古川 容子, 土屋伸一, 長谷見雄二等: "(その2)高齢者擬似体験用具使用者を含む群集の水平面における歩行行動特性"2001年度日本建築学会関東支部研究報告集. 417-420 (2002)
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[Publications] 宮野義康, 土屋伸一, 長谷見雄二等: "(その3)高齢者疑似体験用具使用者を含む群集の階段における歩行行動特性"2001年度日本建築学会関東支部研究報告集. 421-424 (2002)
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[Publications] 土屋伸一, 古川容子, 長谷見雄二等: "(その4)車椅子使用者を含む群集の流動特性"2001年度日本建築学会関東支部研究報告集. 425-428 (2002)
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[Publications] 分部裕樹, 土屋伸一, 長谷見雄二等: "(その5)高齢者疑似体験用具と実際の高齢者の比較"2002年度日本建築学会関東支部研究報告集. 395-398 (2003)
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[Publications] 稲原攝雄, 古川容子, 長谷見雄二等: "(その6)高齢者疑似体験用具使用者を含む群集の水平面における歩行行動特性 (経路にネックを設置した場合)"2002年度日本建築学会関東支部研究報告集. 399-402 (2003)
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[Publications] 土屋伸一, 古川容子, 長谷見雄二等: "(その7)車椅子使用者が混在する群集の流動特性"2002年度日本建築学会関東支部研究報告集. 403-406 (2003)