2002 Fiscal Year Annual Research Report
X線異常散乱を利用する液体金属の価電子密度分布の実験的導出
Project/Area Number |
14655228
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
齋藤 正敏 新潟大学, 医学部, 助教授 (40241583)
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Keywords | 液体金属 / 価電子密度分布 / X線異常散乱法 / 逆モンテカルロ法 |
Research Abstract |
今日まで、液体金属の原子配列に関する構造研究は、放射光利用を含めてX線構造解析結果が大部分を占めている。しかし、液体状態に限らずX線構造解析により求めた物質の原子配列はあくまでも電子(主として価電子)を媒介とした有効イオン間の相関を反映したものである。したがって、液体金属の原子分布と電子構造との関連性をより本質的に解明するためには、価電子密度分布を実験的に求めることが重要課題の一つと考えられる。この課題に対して、中性子とX線の散乱機構の違いを利用した(以下、「中性子-X線法」と略す)液体金属の価電子密度分布を実験的に導出する試みが幾つか報告されている。しかし、この中性子-X線法の場合、2種類の試料は全く同じ状態に保持されていることが前提であること、また各散乱実験の角度分解能等の精度を統一しなければならないといった実験上の隘路のために、解析結果に基づく電子分布の議論よりも、散乱実験データ間の差の有意性に関する検討に重点が置かれているのが現状であった。本研究代表者は、上記のような研究上の支障を打破するため、中性子-X線法とは全く原理の異なった実験法として、「X線異常散乱」を利用する液体の価電子密度分布の導出法を新たに考案した。本手法の原理は、異常散乱効果の変化が大きい吸収端近傍のエネルギー領域で散乱実験を複数行い、吸収共鳴に関与している電子を含むコアイオンからの散乱強度を変化させて、価電子部からの散乱とのコントラストから価電子密度分布を導くことである。本年度は、「液体金属の価電子密度分布の導出」のためのX線異常散乱測定用試料加熱部を製作するとともに、剛体球モデルでは近似できない原子分布を有する液体Gaに対して本手法を適用し、その価電子分布の導出を試みた。また、得られた結果と理論計算との比較を通して、本手法の信頼性や問題点を検証した。
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