2002 Fiscal Year Annual Research Report
ディスクリネーション機構によるインバー合金のねじり変形と変形組織のミクロ構造解析
Project/Area Number |
14655254
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
森永 正彦 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (50126950)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野田 俊治 大同特殊鋼(株), 中央研究所, 主任研究員
村田 純教 名古屋大学, 工学研究科, 助教授 (10144213)
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Keywords | インバー合金 / ねじり変形 / ディスクリネーション |
Research Abstract |
合金組成が全く同じFe-Ni-Mo-C系インバー合金で、熱処理だけが異なる二種類の合金で、破断に至るまでのねじり回数(回転角)が大きく異なる現象について、加工誘起変態の関与、ディスクリネーション(回位)機構などのねじり変形現象の特異性の観点からミクロ変形組織を調べることが本研究の目的である。この目的のために、本年度は、異なる熱処理を施したFe-Ni-Mo-C系インバー合金における析出物の種類、量などを調べ、Ms点の評価を行い、加工誘起変態との関連を検討した。 (1)炭素を0.6mass%添加したFe-25Ni-Mo-C系インバー合金を作製し、熱間鍛造、焼鈍し後、線引き加工を行い、それぞれ2種類の熱処理(例:650℃で6時間(R材)、720℃で6時間(S材))を施した。その後、ねじり変形試験を行った結果、R材が数回のねじりで破断したのに対し、S材では100回以上のねじり変形が可能であった。 (2)R材およびS材について、合金の析出物を同定するために、抽出レプリカを用いたTEM/EDX測定を行うとともに、抽出残渣量の測定、残渣のX線回折、残渣液のICP発光分光分析を行った。その結果、両材料における析出相はMo_2C炭化物であることがわかった。また、その析出量はR材で約3.1%、S材で約2.4%と、S材ではやや少ないこともわかった。 (3)(2)で得られた値からR材、S材それぞれの母相に含まれるMo量およびNi量を見積った結果、Mo量がR材で約0.92%、S材で約0.95%となり、Ni量がR材で約43%、S材で約37%となった。これらの値からそれぞれのMs点を見積るとR材で約60K、S材で約150Kとなり、両材料とも極めて低いことが明らかとなった。この結果はこれら両材料で加工誘起変態が生じているとは考えにくいことがわかった。この結果は、TEM観察で両材とも母相がFCC格子で同定されたことと一致するものである。
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