Research Abstract |
浮遊液滴振動法を用いて,融液の界面張力,表面張力,密度,粘性率を同時に測定できる新しい測定システムを構築した.1.5mの小型落下塔を作製し,約0.55秒間の微小重力環境下で液滴の振動解析を行うことで,短時間でこれらの物性値の測定を可能にした.基本的なアイディアは,短時間で振動解析が行えるように液滴を小さくすることで表面振動の振動数を大きくし,それを自由落下させる.そこで,高速の振動を記録,解析するために,レーザー,シリンドリカルレンズ,毎秒84000コマ(2048画素)の取り込みが可能なラインセンサーを組み合わせた新しいシステムを開発した.さらに,液滴の大きさ,曲率,種類,雰囲気ガスの圧力等の影響を検討した. レーザーは平行光線であり,液滴がレーザー柱の中のどの位置にいても,正確に液滴の影を投影できる.また,その光をシリンドリカルレンズを用いてラインセンサー上に集光することで,液滴の最大径を測定することが可能である.このシステムの有効性を確かめるために,純水を用いてその表面振動を測定した.液滴の固有振動数,半径および減衰率を求め,次の式に代入して表面張力γ,密度ρ,粘性率ηを算出した.γ=3πMν^2/8,ρ=3M/4πR^3,η=3M/20πτR,ここで,M:質量,ν:表面振動数,R:液滴半径,τ:減衰時間である.その結果,室温で表面張力は72.3±2.5〜73.2±2.5mN/m,密度は0.96〜1.04g/cm^3,粘性は0.88〜0.98mPa・sとなり,文献値と非常に良く一致した.このように,本手法が物性値の測定手法として十分に有効であり,その測定精度は宇宙ステーションや10秒間の落下塔を用いた場合に劣らないことを示すことができた.
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