2002 Fiscal Year Annual Research Report
補体の脂質膜破壊機能を利用した新規分析法の開発―血中の抗体濃度の定量―
Project/Area Number |
14655295
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
加藤 敬一 愛媛大学, 工学部, 助教授 (10117088)
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Keywords | 補体 / 抗体分析 / 脂質膜 / リポソーム / 脂質ベシクル / 抗体 / IgG / W / O / Wエマルション |
Research Abstract |
本研究は、筆者らがこれまで開発してきた脂質ベシクル、あるいは脂質液膜ベシクル(単分散型のW/O/Wエマルション)を抗原の固定化担体として用いて、新規な抗体分析法に利用することを目的とした。 この分析法の原理は、(1)この抗原固定化担体を、抗体の存在する血清中に投入した後、(2)さらに補体を投入して、抗原-抗体結合部位を攻撃させ、(3)担体の脂質膜を破壊する。(4)その結果担体内から漏出したトレーサーの濃度を測定する(存在する抗体濃度に比例して膜破壊の度合いも大きく、結果として抗体存在量と漏出トレーサー濃度は比例する)、という一連の反応に基づくものである。 抗原-抗体のモデル反応系としては二つの系を選択した。第一は肺炎の病原体である菌体の表面の抗原(CRP(C-Reactive Protein))に対する抗体(抗CRP抗体)である。この抗体が測定出来れば、肺炎の進行度がわかる。さらに、どのIgG抗体についても本法が適用可能であることを確認することを目的として、第二のモデル系である卵白由来のリゾチームを抗原として、その抗リゾチーム抗体との反応系を選択した。 上記の反応系を、以下の二つの担体で比較して、本分析去に対する担体の適合性を検討した。第一の担体はSpan80、大豆油などからなる、単分散型のW/O/Wエマルションである。第二の担体は筆者らがこれまでに多く利用してきたSpan80を主成分とするハイブリッド型の脂ベシクルである。これらの担体に上記の反応系を適応させて、溶存抗体濃度と漏出トレーサー濃度の相関を検討した。 その結果、(1)二種の抗原-抗体反応系ともに良好な比例関係が得られ、上記の原理に基づく抗体の定量が可能であることが判明した。(2)トレーサー物質として蛍光物質(FITC)を用いる方が可視光分析のものよりも感度が良い。(3)W/O/Wエマルションの水の膜透過係数はベシクルのそれの約2倍の値となり、浸透圧に弱く膜破壊速度は速い。(4)W/O/Wエマルションはベシクルに比べ、分析感度は高いが、安定性に欠ける、などの結論を得て両者の長、短所を明らかにした。
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