2002 Fiscal Year Annual Research Report
ポリチアヘテロヘリセンの新しい合成と分子ソレノイドの創出
Project/Area Number |
14655350
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
西出 宏之 早稲田大学, 理工学部, 教授 (90120930)
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Keywords | らせん高分子 / ソレノイド / 分子内閉環反応 / ポリフェニレンオキシド / 不斉酸化 / 酸化重合 / パイ電子 / ポリフェニレン |
Research Abstract |
純有機物質での「分子ソレノイド」(有機導線でつくられたナノサイズの電磁石)はその特異な光学特性や高度に制御された三次構造から新たな物質系として期待される。本研究では、複素五員環の非対称性を利用してチオフェン環を含むらせん型芳香族高分子「ポリチアヘテロヘリセン」を新たに設計・合成する。さらに、電気・磁気・光学特性を明らかにすることで、「分子ソレノイド」の創成の足掛かりにする。 (1)フェノキサチイニウム型らせん高分子の合成とヘリシティの制御p-メトキシフェノールを出発物とし、2ステップを経てフェノール水酸基の2位にメチルチオ基を導入した。スルフィドの不斉酸化は水酸基が存在すると進行しない。4-メチルスルフィニル-4-メトキシフェノールの水酸基を保護し、側鎖を不斉酸化した後、脱保護した。保護基を適当に選択することで、キラルな(R),(S)のスルホキシドを有するフェノールを光学純度高く合成した。(R),(S)体ともに銅/ピリジン錯体を用いて酸化重合し、前駆ポリ(1,2-フェニレンオキシド)を得た。強酸中、立体選択的な分子内閉環反応を生起させ、対応するフェノキサチイニウム型らせん高分子((R)-(+)体、(S)-(+)体)を合成した。(R)-(+)体、(S)-(+)体の円偏光二色性スペクトルは紫外・可視スペクトルに対応して正、負のCotton効果を示し、スルホニオ基の分子内閉環反応によるヘリシティ(らせん巻き方向)の制御が可能であることを明らかにした。 (2)ベンゾチオフェン型共役らせん高分子の合成 分子ソレノイドへの適用を見据え、共役高分子を主鎖骨格に有する剛直π-共役連鎖を合成した。p-ニトロトルエンの臭素化、ニトロ基の還元、脱アミノ基反応、さらにGrignard反応によるボロン酸エステルの導入を経て、1,3-フェニレンビスボレートを得た。一方、1,3-ベンゼンジチオールをメチル化し、4,6位に臭素を置換することで、4,6-ビス(メチルチオ)-1,3-ジブロモベンゼンを収率高く合成した。得られたボロン酸エステル体とジブロモベンゼンを塩基性下、Pd触媒を用いて重合し、ポリ[4,6-ビス(メチルチオ)-1,3-フェニレン-alt-2-メチル-1,3-フェニレン]を乳白色粉末として得た。側鎖メチルチオ基を定量的に酸化し、さらに、トリフルオロメタンスルホン酸と反応させスルホニオ基で架橋されたらせん骨格を有する閉環重合体が濃茶色粉末として得られた。吸収スペクトルは最大吸収波長、吸収端ともに前駆体に比べ長波長シフトしており、共役平面性はらせん構造においても拡大していることを明らかにした。
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