2003 Fiscal Year Annual Research Report
マメ科緑肥作物・窒素固定細菌共生系による難溶性リン酸可溶化の可能性
Project/Area Number |
14656009
|
Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
大門 弘幸 大阪府立大学, 農学生命科学研究科, 助教授 (50236783)
|
Keywords | 緑肥作物 / 難溶性リン酸 / クロタラリア / セスバニア / 根粒菌 / マメ科作物 |
Research Abstract |
マメ科緑肥作物を有機物資源として利用する低投入型の作物生産では,資源の枯渇が懸念されているリン酸の回収能力について明確にしておく必要がある.本研究では,異なるリン酸施用条件下において,それぞれの作物のリン酸吸収を調査するとともに,接種根粒菌による難溶性リン酸の溶解程度を評価することを目的とした.平成15年度における研究実績の概要は下記の通りである.平成14年度にリン吸収機能が優れることを明らかにしたSesbania cannabinaについて,Fe態,Al態,Ca態のリン吸収をポット試験で調査し,Fe態についてはやや吸収が劣るものの,いずれの結合態の無機態リン酸もよく吸収することが示された.Ca態リン酸を懸濁した培養液を用いて,セスバニアとクロタラリアに共生する根粒菌(U9709SC系統およびUSDA3024系統)のリン溶解活性を調査したところ,セスバニア菌において,液体培地中の水溶性リン濃度の増加と寒天培地の懸濁部分の透明化が生じ,高い溶解活性が認められた.一方,クロタラリア菌においては溶解活性は認められなかった.両植物を圃場で栽培し,収穫した地上部を赤玉土を充填したポットに緑肥として混和して,エンバクのリン吸収について調査した.その結果,播種後5ヶ月目における乾物重は,クロタラリア区ではリン酸カリ区と同様にフィチン区や対照区に比べて有意に高く,セスバニア区でもリン酸カリ区,フィチン区と同様に対照区より有意に高かった.リン含有量は,両緑肥区では,リン酸カリ区と同様に高く,フィチン区や対照区と比較すると有意に高いことが示された.以上のように,本研究では,いくつかの緑肥マメ科植物については,根粒菌による窒素固定機能だけでなく,リン溶解機能においても緑肥として利用できる可能性が示唆された.今後は,リン獲得機構やそれぞれのリン吸収の貢献度について,植物体と根粒菌の両側面から明らかにする必要があろう.
|
Research Products
(4 results)
-
[Publications] 信田和恵ら: "異なるリン酸施用条件に対する数種マメ科植物の生長反応とリン吸収特性"日本作物学会紀事. 72・(別1). 164-165 (2003)
-
[Publications] 信田和恵ら: "セスバニアとクロタラリアのリン回収能とすき込みリン資材としての評価"根の研究. 12・4. 191 (2003)
-
[Publications] Daimon, H.et al.: "Phosphorus uptake of Sesbania cannabinaa and Crotalaria juncea associated with root nodule bacteria"Proceedings of the 4th International Crop Science Congress in Austlaria. (2004.9にWEBで公開). (2004)
-
[Publications] 大門弘幸, 共著:三宅博, 大門弘幸: "植物生理学-分子から個体へ-(4章 植物の物質代謝の項執筆)(編集:幸田泰則, 桃木芳枝)"三共出版. 224(71-102) (2003)