2002 Fiscal Year Annual Research Report
送粉共生系の保全を目的とした園芸・緑化植物における訪花動物相のモニタリング
Project/Area Number |
14656015
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
比良松 道一 九州大学, 大学院・農学研究院, 助手 (30264104)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大久保 敬 九州大学, 大学院・農学研究院, 教授 (80150506)
尾崎 行生 九州大学, 大学院・農学研究院, 助手 (60253514)
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Keywords | 送粉共生系 / 園芸・緑化植物 / 生態系保全 / 生物多様性 / 遺伝的かく乱 |
Research Abstract |
本研究の目的は,送粉共生系の保全における園芸・緑化植物の代償的利用の可能性を検討することである. 送粉者による園芸緑化植物の利用程度を評価するために,34種類の園芸・緑化植物における送粉者の種数と訪花頻度を調査した.調査対象のうち,3種(キク科テイオウカイザイク,ユリ科ヘメロカリス,ヤブカンゾウ)をのぞくすぺてにおいて,何らかの送粉動物が訪花しており,人為植栽された植物が送粉動物の餌資源として多少なりとも機能していることがわかった.中でも,スイカズラ科ハナツクバネウツギ,バラ科リンゴ,ミカン科ウンシュウミカンにおいては,観察された訪花昆虫が10種以上,単位時間当たり総訪花数が70回以上と,送粉者による利用度が比較的高かった.送粉者利用度の高い植物は,日本在来種か外国産種かを問わず,概して,比較的大きな単位面積当たりのディスプレイサイズ(総花数)や,花蜜分泌・貯蔵位置が比較的浅い花器構造を有していた.したがって,送粉者の餌資源として園芸・緑化植物を活用する上で,こうした形質に配慮することが重要であると考えられた. 園芸・緑化植物との雑種形成による在来種における遺伝的かく乱の可能性を探るために,対照的な送粉シンドローム形質を有する屋久島のサツキとマルバサツキの自然集団をモデルとして,浸透交雑の実態を調査した.アロザイム分析の結果,屋久島におけるそれら2種の集団間の遺伝的分化は非常に小さく,外観形質によって類別される種とは異なる種に近い遺伝的構造を有する集団もあることが判明した.このことは,異種間の地理的距離がある程度接近すると,ツツジ類の交配前隔離は容易に崩壊し,雑種形成による遺伝子浸透が生じる可能性が高いことを示唆している.したがって,在来種との間に雑種を形成することができる園芸・緑化植物は,生態系への負のインパクトを回避するような条件付き利用方法を検討することが重要と思われた.
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