2002 Fiscal Year Annual Research Report
新規極限環境適応因子ポリ-γ-グルタミン酸:産生機構の解明と生物工学的応用
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14656041
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
味園 春雄 高知大学, 農学部, 教授 (30027073)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
芦内 誠 高知大学, 農学部, 助教授 (20271091)
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Keywords | ポリ-γ-グルタミン酸 / 極限環境微生物 / 極限環境適応因子 / Bacillus halodurans / Natrialba aegyptiaca / ポリ-γ-グルタミン酸合成酵素 / 新規複合型酸性ポリアミノ酸 / アミドリガーゼ |
Research Abstract |
ポリ-γ-グルタミン酸(PGA)は納豆に独特の風味を与える粘性物質の主成分であることや生分解性と高吸水性を備えた環境低負荷型高分子素材であることが知られている。一方、その生理機能についての知見は皆無に等しかった。代表者らはPGAがアルカリ環境や高塩濃度下でのみ生育する、いわゆる極限環境微生物で高頻度にPGA生産能が見いだされていることに注目し、PGAには環境適応因子としての機能が備わっていることを示唆した。PGAは酸性ポリマーであるため環境中のアルカリpHの中和に役立ち、その吸水性を利用すれば高塩環境下で発生する脱水現象から身を守ることもできる。一方で、PGAのような電荷を帯びたポリマー、あるいはその誘導体の保水能が高塩環境では著しく損われることも知られている。これらの事実は、好塩古細菌Natrialba aegyptiacaが生産するPGAは高塩環境下でも十分な保水性を維持できるように特殊化した構造を持つことを示唆している。代表者らは、本古細菌を短期間(4日、脱水現象なし)及び長期間(30日、脱水現象あり)培養し、PGAの構造変化を調べた。その結果、短期間培養であられるPGAはL-グルタミン酸のみからなるL-PGAであったのに対し、長期間培養で得られた酸性ポリマーは、このL-PGAを主鎖とし、側鎖にL-アスパラギン酸が結合した複合型ポリアミノ酸であることが示唆された。このような構造をもつポリマーはこれまで知られておらず、またPGAの機能改良という応用面でも重要な示唆を与えるものと期待される。一方、代表者らは、好アルカリ細菌Bacillus haloduransのL-PGA生産システムの解明にも着手した。最近、B. haloduransの全ゲノム配列が公開され、すでに代表者らによって明らかにされている納豆菌のPGA合成酵素と類似の遺伝子産物が見つかるものと期待された。ところが、そのようなホモログタンパク質は本菌には見つからず、既知のPGA合成酵素とは全く異なる酵素によりL-PGAが生産されていることが明らかとなった。本研究において、代表者らは、B. haloduransのL-PGA合成に関わる遺伝子群の同定に成功し、plg123名付けた。これらの遺伝子産物は、納豆菌のPGA合成酵素PgsBCAとの類似性はなく、むしろシアノファイシンと呼ばれるポリアミノ酸の合成酵素、特にそのアミノ基側ドメインと類似することが判明した。
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[Publications] 芦内 誠, 味園春雄: "ポリ-γ-グルタミン酸の環境適応因子としての機能:極限環境微生物が巧みに利用してきた機能を我々は応用できるか?"科学と生物. 40・4. 212-214 (2002)
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[Publications] Makoto Ashiuchi, Haruo Misono: ""Poly-γ-glutamic acid", in : Biopolymers Vol.7(S.R.Fahnestock, S.R.and A.Steinbuchel, Eds.), Chapter 6"Wiley-VCH (Weinheim, Germany). 123-174 (2002)