2004 Fiscal Year Annual Research Report
キチナーゼとその類縁酵素の立体構造に基づく理論pKa値の計算と共通機能構造の推定
Project/Area Number |
14656043
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
深溝 慶 近畿大学, 農学部, 教授 (50181243)
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Keywords | キチナーゼ / pKa値 / 触媒機構 / 部位特異的変異導入 |
Research Abstract |
本研究では、キチン質加水分解酵素の触媒反応に必須な機能構造を、酵素の立体構造に基づく理論的pKa値の計算および部位特異的変異導入法によって明らかにすることを試みている。本研究の第一段階として、オオムギ種子由来のキチナーゼのX線結晶構造(2BAA)を基にして、すべての解離性アミノ酸残基のpKa値の推定を試みた。その結果、多くの解離性側鎖において、ほぼ正常なpKa値が得られたが、いくつかのアミノ酸残基、とりわけ、Arg114(>20.0)、Arg215(>20.0)、Glu203(-2.6)では、異常なpKa値が算出された。これらの異常なpKa値は、これらのアミノ酸残基の側鎖が他の側鎖と強い相互作用を行っていることを示すものであり、また、これらのアミノ酸残基の側鎖が触媒残基に近接して存在していることから、触媒反応にも関与していることが示唆された。 以上の結果に基づき、まずArg215を部位特異的変異によってアラニンに置換させた変異体(R215A)の作製を試みた。部位特異的変異PCR法によって得られた変異遺伝子をEscherichia coli BL21(DE)pLysSに導入し、変異キチナーゼ遺伝子を発現させた。R215Aの酵素活性は完全になくなっており、Arg215が酵素活性発現に必須であることがわかった。R215AのCDスペクトルおよび蛍光スペクトルを野生型のものと比較すると、それぞれの強度は大きく減少しており、この変異によって大きな構造変化がおこっているものと思われた。熱変性実験を行い熱安定性を調べてみると、熱変性の転移温度は野生型に比べ、ほぼ6℃ほど低下していた。次にGlu203をアラニンに置換させた変異体を作製し、上と同様の解析を行った。この変異によって、酵素活性は完全になくなり、R215Aの場合と同様の構造変化がみられた。さらに熱変性の転移温度もほぼ6℃低下した。以上より、Arg215は触媒残基の近傍において、Glu203と相互作用を行うことによって、触媒残基のミクロ環境を適正なものに保っているものと思われた。
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Research Products
(3 results)