2002 Fiscal Year Annual Research Report
脂質代謝における刷り込み効果発現機構の解明と生活習慣病予防的な食環境形成への展開
Project/Area Number |
14656058
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
今泉 勝己 九州大学, 大学院・農学研究院, 教授 (90037466)
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Keywords | 刷り込み効果 / 脂肪酸合成酵素 / ステロール応答配列結合タンパク質 / メタボリックメモリー / メバロン酸 |
Research Abstract |
胎児,発育期等のCritical Periodにおける食環境は,成熟期における各種生活習慣病の発症に影響することが指摘され,実際,実験動物では,これらCritical Periodの食環境が各種疾患のバイオマーカーに影響することが示されている。コレステロール合成の前駆物質であるメバロン酸を離乳期の仔ラットに与えると,脂肪酸合成酵素(FAS)の活性,mRNA量およびFASの転写を促進するステロール応答配列結合タンパク質(SREBP1)量等が上昇し,成熟期では,これらのレベルが低下するように刷り込まれることを見いだした。これらの知見から,Critical Periodに与えた脂質代謝を活性化する食事環境は,同時に脂質代謝を抑制する機構を強化させるため,成熟期ではその代謝系を抑制するように刷り込まれるという規則性があるという仮説を持つに至った。そして,このメカニズムは分子生物学的な手法によって解明することができると考えた。本年度の研究では、成熟ラットに一時的にメバロン酸およびコレステロール食を与え、摂取したコレステロールおよびメバロン酸が摂取後の脂質代謝に及ぼす影響について検討した。 性成熟をする8週齢の雄SDラットを、AIN-93G純化食を摂食する群(Std群)、メバロノラクトンを0.2%含む食餌を摂食する群(Mev群)、0.1%のコレステロールを含む食餌を摂食する群(Chol群)の3群に分けて3週間自由摂食させた後、3群ともStd食を4週間自由摂食させた。6時間の絶食後に断頭により屠殺し、血清及び肝臓を得た。さらに、肝臓から超遠心分画によりサイトソルを得て、これをFASの活性測定に用いた。また、肝臓の脂質分析は化学法により行い、肝臓よりRNAを抽出し、FAS及びSREBP-1のmRNA量をノーザンブロットハイブリダイゼーション法により定量した。 脂質濃度やFAS活性、mRNA量の結果から、一時的なメパロン酸摂食は成熟ラットの脂質代謝に影響を及ぼさないことが示唆された。現在、培養細胞(HepG2)にメバロン酸及びコレステロールを添加し、そのFAS遺伝子発現量について検討を行う予定である。
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