2002 Fiscal Year Annual Research Report
カシノナガキクイムシの穿孔を阻害する天然化合物の探索
Project/Area Number |
14656061
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
鎌田 直人 金沢大学, 大学院・自然科学研究科, 助教授 (90303255)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 進一郎 三重大学, 生物資源学部, 助教授 (90092139)
垣内 信子 金沢大学, 薬学部, 助教授 (30204324)
御影 雅幸 金沢大学, 薬学部, 教授 (50115193)
江崎 功二郎 石川県林業試験場, 森林環境部, 研究員
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Keywords | ナラ類 / 集団枯死 / カシノナガキクイムシ / Raffaelea quercivora / 辺材部 / 壊死変色 / ガロ酸 / 忌避効果 |
Research Abstract |
日本海側の地域を中心に発生しているナラ枯れは、カシノナガキクイムシ(以下、カシナガ)の共生菌Raffaelea quercivoraによって引き起こされる。カシナガが穿孔した被害木の辺材部には、坑道伸長にともなって変色域が形成される。しかし、2年目に穿孔したカシナガは、この変色域を避けて坑道を構築する。具体的には、変色域の手前で坑道が停止したり、あるいは、変色域の手前で坑道がほぼ直角に折れ曲がる。変色の形成は、材内に侵入したR. quercivoraのタンナーゼの働きによって、材中に存在するエラジタンニンやガロタンニンが加水分解され、生成されたタンニン酸を無毒化するラッカーゼの酸化過程で黄色の物質が蓄積することによって引き起こされることが示唆された。HPLCでタンニン類の定量分析を行った結果,健全な辺材部に比べると、変色部ではガロ酸(約0.001%材湿重量)が新たに生成され、エラグ酸(約0.050%材湿重量)の濃度も高くなっていた。そこで、これら2つのタンニン酸が、R. quercivorqの菌糸成長とカシナガの坑道構築行動に及ぼす影響を調べた。培地上でのR. quercivoraの菌糸成長に対しては、エラグ酸、ガロ酸とも影響は認められなかった。しかし、ガロ酸にはカシナガ成虫の忌避反応が認められた。すなわち、一定濃度以上のガロ酸水溶液を辺材部にしみ込ませると、しみ込ませた部分を避けて坑道を曲げて構築する、あるいは坑道構築自体を停止するなど、野外でカシナガが変色部を避けるのとまったく同じ現象を再現することができた。したがって、ガロ酸は、カシナガが変色域を避けて坑道を構築する直接的な要因の一つであると考えられた。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 小穴久仁, 垣内信子, 江崎功二郎, 笠井美和, 光永徹, 伊藤進一郎, 御影雅幸, 鎌田直人: "カシノナガキクイムシの穿孔による壊死変色部と健全材との成分の比較"中部森林研究. 51(印刷中). (2003)
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[Publications] 笠井美和, 光永徹, 伊藤進一郎, 鎌田直人: "カシノナガキクイムシに被害を受けたミズナラの抽出成分に関する研究-Raffaelea quercivoraのタンナーゼの抽出成分の変化-"中部森林研究. 51(印刷中). (2003)
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[Publications] 鎌田直人: "カシノナガキクイムシの生態"森林科学. 35. 26-34 (2002)
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[Publications] Kubono, T., Ito, S.: "Raffaelea quercivora sp. nov. associated with mass mortality of Japanese oak, and the ambrosia beetle (Platypus quercivorus)"Mycoscience. 43. 255-260 (2002)
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[Publications] N.Kamata, K.Esaki, K.Kato, Y.Igeta, K.Wada: "Potential impact of global warming on deciduous oak dieback caused by ambrosia fungus carried by ambrosia beetle in Japan"Bulletin of Entomological Research. 92・2. 119-126 (2002)
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[Publications] 伊藤進一郎: "ナラ枯れ被害に関連する菌類と枯死機構"森林科学. 35. 35-40 (2002)