2004 Fiscal Year Annual Research Report
個葉レベルから樹冠レベルへ;生態生理情報を利用した新しいスケールアップ手法の提案
Project/Area Number |
14656062
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
角張 嘉孝 静岡大学, 農学部, 教授 (60126026)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
向井 譲 岐阜大学, 農学部, 教授 (80283349)
千葉 幸弘 森林総合研究所, 生産技術部・物質生産研究室室長
水永 博巳 鹿児島大学, 大学院・農学研究科, 助教授 (20291552)
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Keywords | ブナ / 多様性 / 光合成モデル / スケールアップモデル / 葉面積 / 海抜高 / 光合成応答 / 光阻害 |
Research Abstract |
地球科学あるいは森林を取り巻く諸科学の発展には、これまで得られた情報を時間、スケール(サイズとスペース)のなかで捉え直す必要があることが認識される必要がある。例えば個葉レベルから樹冠レベル、さらにはメソスケールへスケールアップ、あるいはそれとは逆に、リモートセンシングや航空写真からのスケールダウンによる検証、あるいは予測など双方向の情報認証が大変重要になる。しかしながら、多くの生理生態学の情報は、個葉のある一定環境条件下の情報にすぎない。環境科学が地域からグローバルレベルへと加速度的にダイナミックに融合していく中で、これらの情報を樹冠の中で捉え直し、かつ情報の変異として捉えていく必要がある。ある一定のコンセンサスを受けるような手法を開発する必要がある。本年度は樹冠内の光合成の多様性について下記の実験を行った。 (1)前年度に引き続き、樹冠層(地上7〜22m)において自由に移動できるジャングルジム型のタワーを利用して樹冠内の光合成特性の解析を行った。光合成蒸散測定装置を用いて、光合成速度、蒸散速度の日変化を測定した光条件は定常条件における光合成・蒸散能力のパラメータ評価を行った。(2)光呼吸の解析:クロロフィル蛍光反応測定装置(Mini-Pam)を用いて、電子伝達率を測定し、光の捕捉能率や過剰エネルギーの放出能力を評価した(3)樹冠内のルビスコ、フラボノイド、クロロフィル・キサントフィルプールサイズ、窒素濃度などの解析:光合成を律速するクロロフィル量とそのa/b比、葉の窒素濃度を月2回の予定で定期的に調べた。樹冠内のルビスコおよびフラボノイドの蓄積量の日変化および季節変化を調べた。(4)樹冠内の比面積の解析:光合成・蒸散速度、クロロフィル蛍光反応などを調べた葉の形態的な特性、たとえば比葉面積(SLA)を測定し、葉層ごとに光強度の履歴に対する生理反応の多様性を調べた。(5)環境因子の計測:樹冠内の数カ所に気温・湿度センサーを配置し樹冠内の飽差勾配を10分間隔で計測した。ブナ樹冠最上層の葉が強光時に日中低下を起こすのは葉面飽差の増大による気孔閉鎖が主な原因である。この気孔閉鎖は細胞間隙内CO_2濃度の低下を引き起こし、光阻害の危険性を増大させるが、光呼吸の増加とキサントフィルサイクルによる熱放散によって光阻害を回避していると考えれる。
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Research Products
(5 results)