2002 Fiscal Year Annual Research Report
神経ペプチドPACAPによる糖尿病の分子病態制御に関するゲノム薬理学的研究
Project/Area Number |
14657025
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
馬場 明道 大阪大学, 薬学研究科, 教授 (70107100)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 均 大阪大学, 薬学研究科, 助教授 (30240849)
新谷 紀人 大阪大学, 薬学研究科, 助手 (10335367)
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Keywords | PACAP / 糖尿病 / トランスジェニックマウス / ランゲルハンス島 / β細胞新生 / 肥満 / インスリン / 膵臓 |
Research Abstract |
神経ペプチドPACAPは、VIP、グルカゴン、GLP-1等と同族であり、神経伝達物質・調節因子として働いている。最近、超低濃度(10^<-14>M)PACAPが、インスリン分泌をグルコース依存的に促進することが見い出された。また連鎖解析により、PACAP遺伝子の存在する18p11の範囲と糖尿病の連鎖が示された。しかし、PACAPのin vivo作用あるいは糖代謝恒常性における長期作用については、依然十分には研究されていない。我々は、PACAPの生理・病態的意義を解明するため、PACAP欠損マウス、膵臓ラ氏島(膵島)特異的PACAP過剰発現トランスジェニック(Tg)マウス、他を作製して、in vivo機能を追求してきている。 本研究は、これら変異マウスに対して、遺伝的および非遺伝的に糖尿病態を惹起し、糖代謝恒常性におけるPACAPシグナルの意義を解明することを目的として実施し、初年度においては以下の成績を得た。 1.PACAP Tgマウスの膵島massは、12ヶ月齢において野生型対照群よりも増加していた。 2.ストレプトゾトシン(STZ)誘発糖尿病態が、Tgマウスは軽度であった。 3.STZ投与後のβ細胞死はTgマウスと野生型間に差はなかった。しかし、Tgのβ細胞増殖(新生)は有意に増加していた。 4.肥満・糖尿病を発症するKKAyマウス(Ay)とPAcAP Tgマウスを交雑することにより、Ay膵島におけるPACAP過剰発現の作用を解析した。5〜8週齢頃からAy/+、Tg/+:Ay/+マウスは共に肥満になり、インスリン抵抗性が生じる。このときAy/+マウスに顕著に顕われる血漿インスリン上昇および膵島の過形成は、Tg/+:Ay/+マウスで有意に抑制されていた。 5.これらの結果、PACAPは、STZによる急性β細胞障害時にはβ細胞新生を促進し、肥満誘発糖尿病態時の膵島過形成に対しては抑制して、膵島massを制御する因子である可能性が示唆された。
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Research Products
(8 results)