2002 Fiscal Year Annual Research Report
EBウイルスによる"hit-and-run"transformationと胃癌
Project/Area Number |
14657075
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
星川 淑子 鳥取大学, 医学部, 助手 (10181489)
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Keywords | 胃癌 / EBウイルス / 前初期遺伝子 / 遺伝子多型 |
Research Abstract |
われわれは、胃癌におけるEBウイルス(EBV)の感染状態を検討し、種々の遺伝的に異なるEBV株が胃粘膜上皮細胞の癌化に関与するが、多くの場合はがん細胞から脱落し、ごく一部のEBVのみが進展した胃癌に残存するという仮説をたてた。本研究では、EBV陽性胃癌においてEBV再活性化誘導のマスター遺伝子であるEBV前初期遺伝子、BZLF1遺伝子の第一イントロンに遺伝子変異が高頻度に検出されることに注目し、以下のウイルス学的解析を行った。(1)EBV陽性胃癌組織およびEBV関連疾患患者より樹立されたリンパ芽球様細胞株(LCL)についてBZLF1遺伝子の第一イントロンの配列をPCRによりクローン化した。(2)クローン化した第一イントロンの塩基配列を決定し、バーキットリンパ腫細胞株およびB95-8EBVの配列と比較検討した結果、胃癌より検出されたEBVでは、第一イントロンに存在する約30bpの内部繰り返し配列(internal repeat: IR)の繰り返し数が著しく増加していることを明らかにした。(3)IR数の増加によって引き起こされると推定される高次構造の変化は、第一イントロンを挟む配列のPCRによる増幅を著しく抑制することを明らかにした。(4)PCRによる増幅の抑制を指標として、EBV陽性胃癌のパラフィン包埋標本について第一イントロンの遺伝子変異を検索したところ、解析した組織標本のすべてにおいてIR数の増加を示唆する結果が得られた。このようなIRの伸長は、日本人のEBV関連疾患患者より樹立されたLCLでは検出頻度が低いので、胃癌に関与するEBVの特徴であると推測される。IRの伸長が、BZLF1遺伝子の発現に何らかの影響を及ぼすことにより胃粘膜上皮細胞への感染トロピズム、発癌、EBV溶解感染などに影響を与える可能性が考えられる。IRの伸長したEBVを分離し、そのようなウイルスの機能を明らかにすることが今後の課題である。
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Research Products
(1 results)